最終目標はのんびり暮らすことです。

海里

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2章:いろんな人の、いろんな事情。

リンジーのこと。 ――2

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 あまりにもスラスラと語るから、目を丸くした。なんでそんなに詳しいんだろう? と首を傾げると、リンジーは肩をすくめて教えてくれた。

「実は、十数年前にスカウトされたんだよねぇ。良い待遇を約束されたけど、あまりに野心が大きすぎて興味が湧かなくて断ったんだ。という理由で、少しだけ知っているんだよ。納得したかい?」

 納得はしたけど、リンジーの謎が深まった気がする。

 それはともかくとして、明日のお祭りってカーティスも来るんだろうか。来るのなら、もう少し話したい。っていうか、子どもにあんな傷をつけさせるなんて……!

 傷だらけのカーティスの腕を思い出して、気持ちを落ち着かせるように深呼吸を繰り返す。とにかく、考えをまとめておかなきゃいけないよな。オレが望む未来のためにも。

「あ。リンジーなら人間が召喚獣を呼び出せるか知ってる?」
「エリスくんは本当、面白いことを思いつくねぇ」

 なぜそこで目をキラキラと輝かせるのかを教えて欲しいよ、リンジー。カイルはオレに近付いて来てベッドまで誘導した。すとんとベッドに座ると、リンジーがそんなオレらを見て「ふふ」と小さな声で笑う。

「召喚獣を呼び出す魔法陣は、特定の場所にしか伝えられていない。だから、魔法陣さえ入手できれば、もしかしたら召喚できるかもしれないねぇ。とはいえ、長らく生きているけれど、そんな人は見たことないよぉ」

 人間が召喚した事例はないってことね。召喚獣を従える村に住んでいたから、カーティスは魔法陣を知っていた? うーん。

 それにしてもリンジーは本当に、なんでそんなことまで知っているんだろう。どのくらい長生きすれば、あんなに物知りになれるんだろう。気になる、すごく気になる。じーっと見ていると、彼はにこにこと微笑み、

「そんなに見つめてどうしたんだい? ああ、ボクに子守歌でも歌って欲しいのかな?」

 からかうように言った。んなワケあるか! ぷいっと横を向くと、くっくっくっと肩を震わせる。絶対人生を愉快に生きている人だ!

「リンジー卿、エリスさまをからかうのはおやめください」

 すごーくイヤそうに眉をひそめ、リンジーを見ながら注意するように口にする。カイルの表情がこんな風に変わるのは、リンジーと話しているときくらいだなぁ。なんてことを考えながら、ベッドの上で大の字になり天井を見上げる。

 天井が高い。シャンデリアがめっちゃ輝いているように見える。うーん、なんて豪華なんだ……

「明日のお祭りっていつから?」
「午前中からです。おそらく賑わっているでしょうから、疲れたらすぐに教えてくださいね」
「わかった」

 ふかふかのベッドの上でごろごろしていると、眠くなるのはなんでだろう。うとうととしていると、ふっと灯りが消えた。カイルかリンジーが消してくれたのかな。

 あれだけたくさん眠ったというのに、なんでこんなに眠いんだろう……?

 ぼんやりと考えていたら、いつの間にか眠りに落ちていたらしく、次に目が覚めたら朝だった。

 寝すぎにもほどがある!

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