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2章:いろんな人の、いろんな事情。
体力付けたはずなのになぁ。 ――3
しおりを挟むぎゅっと父さんたちに抱きしめられて、そっと目を伏せた。なんだか心配をかけてばかりだな、オレ。
「そういえば、父さんと母さんは夜のパーティーに参加するの?」
「誘われたけど断ったよ。エリスが心配だからね」
「……え?」
参加しなくても良いのだろうか、と戸惑った声が出た。抱きしめていた腕を離し、ぽんぽんと頭を撫でられてから、ふわりと抱き上げられた。結局運ばれる運命らしい。カイルが羨ましそうに父さんを見ていた。
「初めての遠出で疲れちゃったのね、人もたくさんいたし。今日はゆっくり休んで、明日のお祭りを楽しみましょう?」
「……行っていいの?」
「体調が良かったら、ね」
母さんがうふふ、と扇子で口元を隠し、目元を三日月のように細めて笑う。本当、綺麗な人だよなぁとしみじみ思っていると、父さんが歩き出した。それに続くように母さんとカイルも。そういえば、どこに泊まるんだろう。この世界ってホテルあるのかな?
――って考えていたら、まさかの王宮。マジか。マジでここに泊まるのか……。客室も絢爛豪華。もう現実逃避したいくらいの煌びやか。竜宮城に行ったつもりになれば良いのかもしれない。
「エリスとカイルはそっちの部屋だ。リンジーも一緒だよ」
「お腹空いているならご飯の用意をお願いするけど、どうする?」
緩やかに首を左右に振った。あれだけたくさん食べたのだから、お腹は空いていない。母さんは「それじゃあ、ゆっくり休んでね」と頬にちゅっとキスをしてから、部屋に入って行った。父さんと母さんは一緒の部屋のようだ。
ということは、シェリルとシェリーが一緒の部屋かな。
父さんはオレを下ろしてから、くしゃりと頭を撫でて「おやすみ」と微笑んだ。ふたりが寝るのには早いだろうけど、部屋でゆっくり夫婦の時間を楽しむのも良いと思う。大人ならお酒も飲めるだろうし。どんなお酒があるのかは知らないけど、さ。
「おやすみなさい」
「おやすみなさいませ、旦那さま」
挨拶を交わしてから部屋に入る。リンジーはシェリルの護衛だけど、さすがに男性が女性の部屋で泊まるのはアウトだろうし。
そんなことを考えながら客室に入ると、すでにリンジーはくつろいでいた。ソファに横になって本を読んでいるのが見えて、オレらに気付くとこっちを見てから起き上がる。
「エリスくん、カイル、さっきぶりだねぇ。おや、エリスくんの魔力が少々減っているようだが、なにかあったのかね?」
「いろいろと、あったよ」
リンジーに話しても良いのか、少し悩んだ。すると、にんまりと微笑むリンジーが見えた。
「魔族の子と話したのだろう? なにか面白い話があったかい?」
カーティスのことを言っているのかな。……あれ、リンジーはどうしてカーティスが魔族だって知っているんだろう? と彼をマジマジ見つめると、リンジーは笑みを深めた。
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