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2章:いろんな人の、いろんな事情。
最悪の結末。 ――1
しおりを挟む小さくなってきた飴をかみ砕く。口の中いっぱいに広がる甘い飴の味。貰った飴はイチゴ味だったみたいだ。
「もうひとついかがですか?」
「ん、もう大丈夫。ありがとな」
カイルがすかさず飴を用意したけど、魔力がだいぶ回復したからもう平気、と首を横に振った。
「えっと、話をちょっと戻して……召喚獣を従えるってことは、召喚士なの?」
「いや、正確には魔導士だ。召喚以外にも魔法使うし」
「……その魔導『し』って、どっちの『し』?」
魔導師と魔導士では少し立場が違う。カーティスは『士』のほうだと教えてくれた。ということは、養子よりも『公爵家に仕える魔導士』のほうが合っているのか?
それにしてもややこしい。ちょっと待ってとばかりに手を前に出して、頭の中を整理する。
カーティスは召喚獣を従える村の出身で、なぜか公爵家の養子になって、言われるままに召喚獣……それも『代償』が必要なほど格上の召喚獣を呼び出そうとしていた? なんか、きな臭いのはきのせいじゃない、よな。
「――ッ」
ずきっと頭が痛んだ。なんだこれ。流れ込んできたのは――『エリス』の記憶。すべて思い出したんじゃなかったのか。それとも、記憶が膨大過ぎて必要な記憶はロックが掛かっている状態だったのだろうか。あまりの痛みにうずくまると、みんなが心配してくれたのかオレに触れた。バチっと静電気のような火花が飛んだのが見える。オレの痛みが移ったかのように全員が表情を歪ませた。それでも十分くらいで痛みも引いてきた。ああ、痛かった。
「…………もー、なんなのよ、これ……!」
みんなを巻き込んでしまった。……でもなんで、みんなまで? ゆっくりと呼吸を繰り返す。そして、ぐったりと身体を脱力させる。これも、なんかの条件をクリアしたからなのか? ちらっとカイルを見ると、彼も困惑しているようだった。
「神さまってあたくしたちのことが、嫌いなのかしら」
「まぁ、『人形』じゃなくなったからな」
でもおかげで『最悪の結末』を知ることができた。シェリルが断罪され、一家離散が最低最悪の結末だと思っていたけど、それ以上に『エリス』とこのゲームの主人公『セシリア』が結婚したあとの王都が一番最悪っぽいぞ。王都が滅んでいる。辺境地にいる『エリス』と『セシリア』は無事けど。そして、『エリス』は王都が滅びるのを見届けてからまたループしてしまったようだ。
「十二歳のオレたちには荷が重いぞ、この未来……!」
「あれが、未来だっていうのかよ……?」
どうやら全員同じ未来を見たようだ。記憶って分け合えるもの?
その未来では、カーティスが学園を首席で卒業。その後、公爵家で『災厄』と呼ばれる召喚獣を呼び出してしまい、その魔力を吸い取られてしまう。公爵は『災厄』の召喚獣を王都に放ち、王都は壊滅。たった一体の召喚獣で滅ぼされる未来、が見えた。恐らく、この部屋にいる全員が、な。
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