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2章:いろんな人の、いろんな事情。
話してみよう。 ――3
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シェリルはそんなオレを見て、額に手を置いて首を左右に振りながら小さく息を吐く。っと、それよりも今はカーティスの手当てが先! ソファに座らせて傷だらけの腕を眺め、どうやって手当てをするか考える。消毒して包帯でグルグル巻き……するには、必要なものがないし。
誰かに治癒魔法を掛けてもらう? 誰に? 下手に大人を呼んだら騒ぎになりそう。……確か、光属性って治癒魔法使えたよな。なら、その属性もあるオレなら、彼を治せる?
ともかく、やってみるしかない!
「うまくいかなかったら、ごめん!」
とにかく傷だらけで痛そうなのが気になって仕方ない。そっとカーティスの手を両手で握り、そう言葉を発するとシェリルとカイルが目を見開く。カイルが制止の言葉を口にする前に目を閉じて、どうか彼の傷が癒えますようにと祈りながら光属性の魔法を使う。イメージとしては、某RPGの回復魔法。自分の中で、確かな手ごたえがあり、目を開ける。ぱぁっと部屋全体が明るくなった。
光が収束して、カーティスの腕を見ると――綺麗に治っていた。よかった……!
カーティスは信じられないものを見たかのように、目を大きく見開き、腕を凝視していた。
「カイル、飴ちょうだい」
「はい、エリスさま」
うまくいって良かった。でも、ドッと魔力が減った気がする。まだ魔力は残っているから、片手で飴を受け取りそれに魔力を込めて食べる。ゆっくり舐めていると魔力も回復するし、なによりも良いところは美味しいところだ。実をいうと魔力を回復するアイテムはあるんだよ。ポーション系の飲み物は。だけどな、あれは……ものすごく……まずいんだ……
もう二度と飲むまいと誓った。それくらいまずかった。
陛下が言っていたのは『食べ物』でって意味だろうし。
「公爵家には光属性を使う人、いないの?」
「……いない。俺を気遣う奴なんて、誰ひとり」
ぴくり、とシェリルとカイルの眉が跳ねあがった。養子とは聞いていたけど、それだけでこんな扱いを受けているとは思えない。彼が目を伏せて黙り込んでしまい、これ以上踏み込むべきか悩む。
「あ、そうだ、シェリル。『代償』ってなに?」
「い、今それを聞くの……? こほん、まぁ良いわ。教えてあげる。『代償』とは、自分よりも格上の召喚獣を呼ぶときに奪われる血液のことよ。あれだけたくさんの傷があったということは、それだけ召喚獣を呼んでいるってこと。……だけど、見たところ契約まではいっていないみたいね?」
「契約?」
「……本当、体力作りも良いけど、勉強もしなさいね。召喚獣は召喚しただけじゃダメなのよ。契約しないと。契約すればその召喚獣の力を借りられるの。逆に、契約出来なければ『代償』だけを失い、召喚獣は還っちゃう」
えーっと……じゃあ、カーティスの腕が傷だらけだったのは、自分よりも格上の召喚獣を呼び出すために傷ついたってこと? あんなに? 血液不足でぶっ倒れない? そんなことを考えていると、カイルがパッとカーティスの拘束を解いた。オレも手を握ったままだったことに気付いたので、離す。ちょっと名残惜しそうに離れた手を視線で追うカーティスに首を傾げた。
「……どうして、治療したんだ?」
「え、……痛そうだったから……?」
「なんで疑問系なのよ……」
だって、本当に痛そうだったから。っていうか、カーティスの腕が『代償』で傷つけられているとしたら、あの公爵は召喚獣でなにをしようとしているんだ?
「そもそも、召喚獣を得て、どうするんだろ?」
誰かに治癒魔法を掛けてもらう? 誰に? 下手に大人を呼んだら騒ぎになりそう。……確か、光属性って治癒魔法使えたよな。なら、その属性もあるオレなら、彼を治せる?
ともかく、やってみるしかない!
「うまくいかなかったら、ごめん!」
とにかく傷だらけで痛そうなのが気になって仕方ない。そっとカーティスの手を両手で握り、そう言葉を発するとシェリルとカイルが目を見開く。カイルが制止の言葉を口にする前に目を閉じて、どうか彼の傷が癒えますようにと祈りながら光属性の魔法を使う。イメージとしては、某RPGの回復魔法。自分の中で、確かな手ごたえがあり、目を開ける。ぱぁっと部屋全体が明るくなった。
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「カイル、飴ちょうだい」
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うまくいって良かった。でも、ドッと魔力が減った気がする。まだ魔力は残っているから、片手で飴を受け取りそれに魔力を込めて食べる。ゆっくり舐めていると魔力も回復するし、なによりも良いところは美味しいところだ。実をいうと魔力を回復するアイテムはあるんだよ。ポーション系の飲み物は。だけどな、あれは……ものすごく……まずいんだ……
もう二度と飲むまいと誓った。それくらいまずかった。
陛下が言っていたのは『食べ物』でって意味だろうし。
「公爵家には光属性を使う人、いないの?」
「……いない。俺を気遣う奴なんて、誰ひとり」
ぴくり、とシェリルとカイルの眉が跳ねあがった。養子とは聞いていたけど、それだけでこんな扱いを受けているとは思えない。彼が目を伏せて黙り込んでしまい、これ以上踏み込むべきか悩む。
「あ、そうだ、シェリル。『代償』ってなに?」
「い、今それを聞くの……? こほん、まぁ良いわ。教えてあげる。『代償』とは、自分よりも格上の召喚獣を呼ぶときに奪われる血液のことよ。あれだけたくさんの傷があったということは、それだけ召喚獣を呼んでいるってこと。……だけど、見たところ契約まではいっていないみたいね?」
「契約?」
「……本当、体力作りも良いけど、勉強もしなさいね。召喚獣は召喚しただけじゃダメなのよ。契約しないと。契約すればその召喚獣の力を借りられるの。逆に、契約出来なければ『代償』だけを失い、召喚獣は還っちゃう」
えーっと……じゃあ、カーティスの腕が傷だらけだったのは、自分よりも格上の召喚獣を呼び出すために傷ついたってこと? あんなに? 血液不足でぶっ倒れない? そんなことを考えていると、カイルがパッとカーティスの拘束を解いた。オレも手を握ったままだったことに気付いたので、離す。ちょっと名残惜しそうに離れた手を視線で追うカーティスに首を傾げた。
「……どうして、治療したんだ?」
「え、……痛そうだったから……?」
「なんで疑問系なのよ……」
だって、本当に痛そうだったから。っていうか、カーティスの腕が『代償』で傷つけられているとしたら、あの公爵は召喚獣でなにをしようとしているんだ?
「そもそも、召喚獣を得て、どうするんだろ?」
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