109 / 184
2章:いろんな人の、いろんな事情。
無事に渡せた。 ――2
しおりを挟むじゃあオレもサクッと渡そう。護衛の人が集めているみたいだったので、「お願いします」とその人に渡した。山のようにあるアレン殿下へのプレゼントを見て、この中から殿下を害するなにかがあるのかもしれないと眺め、それを阻止するためにこんな風に集めているんだろうな。念には念を、ってことか。
それから十分後くらいにアレン殿下が戻ってきた。大量のプレゼントを見て、一瞬眉を顰めたが、すぐに表情を取り繕い見事な営業スマイルを浮かべた。……王族って大変だなぁとのんきに考えながら、また美味しい料理を堪能することにした。炭酸も飲みたい。
二年で結構食べられるようになったし、ちょっとくらいいつも食べている量より増やしてもいいかなーなんて思っていたら、シェリルに止められた。
「がっつかないの、もう」
「あはは……」
だって美味しいから……と言い訳にならなさそうな言葉を選ぶオレもオレだ。ちょっとこのパーティーの雰囲気にのまれているのかも。
「ところでこのパーティーって何時に終わるんだっけ」
「招待状、ちゃんと見てなかったのね。あたくしたち成人していない子どもはそろそろ終わりよ。そして、明日は城下街で平民たちが楽しめるお祭りをするのよ」
「わぁ、そっちも見たい。っていうか絶対、オレはそっちのほうが浮かない」
「……真顔で言うのやめてくれる……? それに、自分のことを地味地味言っているけど、年々変わってきてるの気付いてないの?」
え? と思わず顔に触れる。地味なままで良いんだけど。ルトナークの家族ははっきりとした美男美女に美少女だけどさ。毎日見ているからか、家族みんなの顔を見ても安心できるようになった。これはきっと『エリス』の記憶が戻ったのも関係あるのかもしれない。
ついでに言えばオレが目指しているのは、田舎でのスローライフ。地味な顔でも構わないと思うのだけど……。シェリルの派手な顔立ちを眺めていると、「なによ?」と口をへの字に曲げた。
「いや、シェリルって大人になると綺麗系だろうなぁと思って」
「褒めたってなにも出ないわよっ」
顔を真っ赤にさせる姿は可愛らしいけどね。
父さんや母さん、シェリー、リンジー、そしてカイルを見て、この中で一番地味な顔立ちなのはやっぱりオレだな、としみじみ思った。というか、いつの間にこっちに来ていたんだ、みんな。
緊張してまともに顔を見られなかったけど、もう雰囲気でわかる。陛下も美男、王妃も美人! さらに紹介された人たちも顔面偏差値高かったし、さすが乙女ゲームの世界って感じだ。
「それにしても、本当、すごい量ね。点検する人たち大変そう」
「他にもいろいろ贈られているだろうから、余計にな」
がんばれ、護衛の人たち。そう心の中で呟いて、喉が渇いたからジュースを取りに行った。どのジュースを飲んでみようかなーとグラスを眺める。
なんせいろんなジュースが飲み放題なのだ。こんなに豊富にあると迷ってしまう。とりあえず、炭酸飲みたい。
あのしゅわしゅわとした喉越し、領地に戻ったら味わえなくなりそうだし。もう一杯くらい飲んでも許されるだろう。許してください。
気泡が見えるグラスに手を伸ばすと、ふとオレに話しかけてきたカーティスがじっとこっちを見ていた。視線がバチっと交わる。このジュース飲みたいのかな?
1
お気に入りに追加
428
あなたにおすすめの小説

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~
沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。
巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。
予想だにしない事態が起きてしまう
巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。
”召喚された美青年リーマン”
”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”
じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”?
名前のない脇役にも居場所はあるのか。
捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。
「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」
ーーーーーー・ーーーーーー
小説家になろう!でも更新中!
早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま


BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺
るい
BL
国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

悪役令息の死ぬ前に
やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」
ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。
彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。
さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。
青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。
「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」
男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる