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2章:いろんな人の、いろんな事情。
誕生日パーティー ――1
しおりを挟む煌びやかな空間に、煌びやかな人たち。美味しそうな料理に美しい音楽。まるで映画の中にいるようだ。もちろん、エクストラとして、だけど。オレ的には色気より食い気ということで、美味しそうな料理にふらふら近付いて、王宮シェフの味を堪能した。
もちろん屋敷で雇っているシェフの料理も美味しいけど、王宮の料理もほっぺたが落ちるくらい美味しい。
使っている食材が違うのかもしれないけれど、こんなに美味しいものを毎日食べているのか、王族って。というか、立食パーティーなんだな。みんなそれぞれ楽しそうに談笑している。料理を食べたり、大人はお酒を飲んだり。
「美味しいですか?」
近くにいるカイルが尋ねてきた。口の中に入れていたものを飲み込んでから「うまいよ」と答える。そしてちらっと料理に視線を向けてから彼に視線を戻す。
「せっかくだからカイルも食べたら?」
「いえ、私は……」
護衛だからって食べないつもりなんだろうか。カイルが好きそうな料理を指すと、少し迷うように視線を左右に動かす。じっと彼を見つめると、眉を下げて「……いただきます」と言った。そうそう、せっかくのパーティーなのだから、楽しまないと。さっきから刺さるような視線がオレに届いているけどね!
「ねえねえ、エリス。これ飲んでみた? 美味しいわよ!」
その視線に気付いているのかいないのか、それともなにかの意図があったのか、シェリルがジュースの入ったグラスを持ってきた。しゅわしゅわと気泡が見える。炭酸飲料だ。懐かしいなぁ。この世界に来てからずっと、飲み物は紅茶か果汁ジュースだったもん。
グラスを受け取って、口をつけて飲む。しゅわしゅわの喉越しは懐かしかった。……が、結構刺激強いな。しばらく飲んでいなかったから、余計にそう思うのかもしれない。
「うん、美味しい」
「苦手な人もいるみたいだけどね」
「好みだからね、こういうのって。ああ、でもこのジュース飲み過ぎるとお腹いっぱいになっちゃうから、料理食べたいならほどほどにしておけよ」
「そうね、確かにお腹いっぱいになっちゃいそう。気をつけて飲むわ」
そういえば、オレとシェリルの不仲説を否定するためにお揃いの衣装にしたんだった。もしかして、声を掛けてきたのはそれの延長かな? とりあえず、今はこの美味しい料理を堪能したい。ケーキも数種類あるし、他にもお菓子が用意されているし、子どもの誕生日パーティーだからか、子どもが楽しめるようなものが多い。音楽も軽やかでリズムの良いものだし。
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