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2章:いろんな人の、いろんな事情。
パーティー会場 ――1
しおりを挟む目の前に広がる荘厳な建築物。『エリス』の記憶でもあったけれど、こうして見るとやっぱり息を呑むくらいのゴージャスさ。……ああ、オレの語彙が足りないせいで、この城の良さが言葉にできない!
パーティー会場に案内され、足を踏み入れる。もしかして、オレ、場違いなんじゃないか? と辺りを見渡してしまうくらい、煌びやかだった。
あれ、オレらと同じくらいの子もちらほらいるみたい。どういう基準で招待していたのかな? オレらだけじゃなくて良かった~って思ったんだけどね……
「……誰だ、お前は?」
いきなり声を掛けられて驚いた。赤茶の髪に藍色の瞳の少年。たぶん、オレらと同じくらいの歳の子。身長はオレやシェリルよりも高い。……いや、オレだってこれから伸びる、はず。っていうか、ルトナーク家の中でも一番地味なオレに声を掛けてきたのは、なんで?
「初めまして、エリス・F・ルトナークと申します。……ええと、あなたは?」
「エリス? あのエリスだというのか?」
あのエリスってどのエリスだよ。ツッコミを入れたくなったが、我慢した。それにしてもなんだか見覚えがあるんだけど、どこで見たんだろう。
「目覚めたというのは、本当だったのか」
目覚めてから二年経ってますけど!? ところで本当に、あなた誰?
オレの疑問に答えたのはシェリルだった。一歩前に出て、にこやかに挨拶をする。
「ごきげんよう、カーティスさま」
……カーティス?
それは確か乙女ゲームの攻略対象の名前じゃなかっただろうか。目を見開いてマジマジとカーティス? を見ると、彼は腕を組んで「フン」と一言言って同じようにジロジロとこっちを見る。オレを見ていたのに、ちらりとシェリルに視線を向けて声を掛ける。
「シェリル、だったか。服の趣味を変えたのか?」
「ええ、今日はエリスとお揃いの衣装ですのよ」
そっとオレの肩に手を置いて、にっこりと微笑み――挑むような視線をカーティスに送る。その視線にカーティスはぴくりと眉を動かし、それからフイと横を向いてそのまま去って行った。
「……気をつけなさいね。彼、一応公爵家の人だから」
「一応?」
「養子なのよ」
公爵家の養子だったのか、カーティスって。それで首席なんだっけ。頭の良い人なんだな。『エリス』の記憶の中では、カーティスと話したことがあまりない。……いや、本当に人に興味がなかったんだな。
それにしても、オレが目覚めたことってどのくらいの人たちは広がっているんだろ。むしろ、知らない人のほうが多い?
「……ってことは、公爵家の人たちも来ているってことか」
「たぶんね」
ひそひそと話していると、リーンリーンリーンと鐘の音が聞こえた。なんだろう? と思ったら、音楽が流れ始めた。え、何事?
ラッパの音が鳴り響く。みんなが一斉に顔を一ヶ所へと向けた。オレもそっちへ顔を向けると――アレン殿下が歩いてきた。周りには大人たちが(たぶん護衛)一緒に歩いている。
ばちっとアレン殿下と目が合ったような気がした。
アレン殿下は堂々と胸を張り、しっかりとした足取りで歩いている。真っ赤な絨毯を歩き続け、階段の上にある椅子へと座る。それと同時に、音楽が鳴りやんだ。
そして、今度は赤髪で長身の人が歩いてきた。マントを羽織っている。服の上かだというのに、鍛え上げられた肉体だとわかる。その数歩後ろには、緑色の髪をした女性が歩いている。……もしかして、アレン殿下のご両親?
アレン殿下の隣に立ち、こほんと咳払いをしてから声を出す男性。
「本日はアレンの十二歳の誕生日パーティーに参加してくれて感謝する。ぜひ、楽しんでいってくれ。――それと、ここにエリス……エリス・F・ルトナークがいたら、こちらへおいで」
……名指し、だと……!?
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