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2章:いろんな人の、いろんな事情。

カーメルさんと ――2

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 シェリルはこの二年で可愛さが増した。一緒に出掛ければ誰もが彼女のほうを振り返るくらいの美少女だ。ルトナーク伯爵家の長女は誰もが羨む美少女であるという噂は遠くまで流れているようで、それが事実かどうかを確かめようといろんなところから手紙が送られて来るようになったと父さんが言っていた。

 せめてデビュタントまで待て、と怒りを滲ませた瞳でね。まぁ、自分の愛娘に対し一度見せろっていう貴族の多さに嫌気が差していたのだろう。たぶん。

 ついでにオレよりもシェリルのほうが、背が高い。ヒールを履かれるとさらに高くなる。……本当、オレの身長も伸びますように。

「ダンスレッスンもがんばらないとね、エリス!」
「……踊ること確定?」
「もちろん! パーティーにダンスはつきものでしょう?」

 そうなの? とみんなを見渡すと、全員首を縦に振った。意外だったのはリンジーも同意していたこと。人間のパーティーには参加したことないだけで、他の種族のパーティーには参加したことがあるのかな? え、じゃあダンスはどの種族でも必須ってこと?

「あ、そういえばシェリーは学園に通わなくていいの? 案内、来ていたでしょう?」
「私はシェリルさまの護衛として、シェリルさまがご入学される年に入ろうと思います」
「それだとすぐに社交界デビューじゃない?」
「社交界デビューするつもりはないので、大丈夫ですよ!」

 それは大丈夫と言えるのか? 社交界ってデビューしなくてもいいのか? ちょっと困惑しながらシェリーを見ると、彼女はにこにこと笑いながら「ああ、でもやっぱりこっちも捨てがたい……!」とデザイン画とにらめっこをしていた。

「ボクとしても人間の通う学校に興味はあるから、あるじくんが入学したら一緒に行く予定だよ」
「あ、そうなんだ」

 なんだか賑やかな学園生活になりそうだな、と肩をすくめた。カーメルさんがオレらの話を聞きながら、くすくすと鈴を転がすように笑った。穏やかに微笑んでいる姿は父さんに似ている。っていうか、この世界の学園って、オレが知っている感じの学園じゃなさそうだ。小学から高校までの。大学っぽいのかもしれない。……大学行く前に死んじゃったから、予想だけどさ。

「もちろん、私は護衛としてエリスさまについていきます」
「う、うん。ありがとう」

 学園生活まではあと二年。この世界では十四歳から学園に入学し、いろいろな人たちとの人脈を広げる。その学園にアレン殿下も入学するだろう。……そうなったら、アランはどうするんだろう? と首を傾げた。アランのことはまだ誰にも言っていない。

 そういえば誕生日パーティーってなにかプレゼントを用意しないといけないんだろうか。一応、ふたつ用意しようかな。アランに会えるかもしれないし。

「あ、これはどうかしら? ちょっと凝ってはいるけれど、一番シンプルな感じがしない?」

 シェリルが見せてくれたデザイン画に視線を落とす。確かにこの感じなら、これまでのデザイン画のなかで一番シンプルだ。

「本当だ。カーメルさん、これが良いです!」
「ああ、それにするのね? わかったわ、シンプルかつゴージャスに仕上げてみせるわ!」

 シンプルかつゴージャス……? ちょっと矛盾していないか、それ。と考えながらも意気込んでいるカーメルさんになにも言えなかった。
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