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2章:いろんな人の、いろんな事情。
招待状 ――3
しおりを挟む「ねぇ、エリス。せっかくだから、お揃いの衣装にしない?」
「お揃い?」
「そう。エリスの好きなモノトーンに合わせるから」
双子コーデってことかな。でも、そんなことをしたらシェリルの可愛さが台無しになるのでは? そう思ってうーん、と考えるように手を顎に当てると、シェリルをどう着飾ろうか考えていたであろうシェリーから、賛成の言葉が出た。
「まぁ! エリスさまとお揃いの衣装なら、不仲説を否定できますね!」
「不仲説?」
「ご存知ありませんでしたか? おふたりが幼い頃から不仲だと噂されていたのです」
そんな噂流れていたの!? 目を丸くして瞬かせると、シェリーも目を見開いて驚いていた。とりあえず気持ちを落ち着かせるためにお茶を飲む。美味しい。ついでにクッキーも食べる。うん、甘くておいしい。よし、だいぶ落ち着いた。
「なんだ、自分の噂には鈍かったのかい?」
「いや、だってそんな噂、どっから流れるもんなのさ。オレ、あんまり外に出ていた記憶がないんだけど?」
出掛けるときは大体シェリルが一緒だったし。ああでも、昔……それこそ五歳くらいのときは確かに不仲だった。お互い近寄らないようにしていたからな。一定の範囲に入ると頭痛が酷くなるから。
それは『人形』だったからだろうなぁ。ある意味そういう噂も操作されている可能性もあるのか? うわ、面倒くさい。
「でもさ、せっかくのパーティーなんだからおしゃれしなよ」
「モノトーンでもおしゃれはできるわよ。髪型とかアクセサリーとか。ねえ、シェリー?」
「そうですよエリスさま! シェリルさまはこんなに愛らしいのですから、ドレスはシンプルでも充分だと思います。……個人的にはエリスさまの髪型なども弄りたいところですが……」
「いやあの、オレのことはカイルに任せるから、シェリルとリンジーをお願い」
わきわきと指を動かすシェリーに、ぶんぶんと首を横に振る。彼女に任せたらきっとキラキラとした感じにしてくれるとは思うけど、目立ちたくないからな、オレ。でも、彼女の腕は確かだとシェリルが言っていたので、きっとシェリルは可愛く、リンジーは格好良く仕上げてくれるだろう。彼女は残念そうに頬に手を添えて眉を下げたが、すぐに笑みを浮かべてドンっと胸元を叩いて「お任せください」と胸を張った。
シェリルもリンジーも顔が良いのだから、なんでも似合いそう。乙女ゲームの世界だからだろうな、顔の良い人が多い理由は。
オレはいつものように埋もれるつもりだ。
「では、早速カーメルさまに依頼しますね!」
「頼んで良い?」
「もちろんでございます」
シェリーが立ち上がって部屋から出て行った。あたくしも戻ろうかしら、とシェリルが立ち上がり、カイルに視線を向ける。
「カイルを借りていいかしら? ちょっと話があるの」
「カイルが良いなら」
「そ。カイル、ちょっと良い?」
カイルは小さくうなずいて、シェリルに付いていった。さっきオレのことをシェリルが見ていたのは、お揃いの衣装を提案するためかカイルに話があったからか……どっちもな可能性もあるな。
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