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2章:いろんな人の、いろんな事情。
招待状 ――2
しおりを挟むオレの部屋でシェリル、シェリー、リンジー、カイルがのんびりと休憩をしていて(ここはたまり場か?)、ルトナーク家に宛てられた、いや正確にはなぜかオレ宛て。なぜに。
「名指しされたのはオレだけみたいだけどな」
「ついで扱いよ、あたくしたち!」
はぁ、と大きくため息を吐いた。カイルの淹れたお茶を飲みながら話し合いをする。話し合いというか、ただの雑談なんだけど。
「エリスだけ、なんで名指しなのかしら。そんなに仲が良かったっけ?」
「いや、そうでもないと思うけど」
二年前に友達になってと言われたのはアランのほうだし。アレン殿下はあれ以来会ってないし。なんでこのタイミングなのか。去年は招待状来なかったし。ぼんやりと招待状を眺めて肩をすくめる。
『エリス・F・ルトナークさま』
これを書いたのは誰なんだろう? 一応家族全員で参加できるみたいだから、変なことにはならないだろう。でもなんかやっぱり腑に落ちない。なんでオレだけ名指しなんだよ……!
「そのパーティーには、わたしたちも参加可能なのですか?」
シェリーがクッキーをつまみながら聞いてきた。シェリルがうなずき、同じくクッキーに手を伸ばし、サクッと音を立てて一口食べた。
「人間のパーティーに参加するのは初めてだ。どんな感じなのだろう?」
「アレン殿下の誕生日だし、盛大にするんじゃないかなぁ?」
「いろいろ準備が必要になりますね」
五人で顔を合わせて、うーんと唸る。だってあまりにも、急なことだったから。昨日この招待状が来たときは、父さんも母さんも目を丸くして驚いていたし。ルトナーク家の当主ではなく、息子を名指しで招待状を送るってことはかなり珍しいことらしい。
「パーティー用のドレスを用意したり、それに合わせたシェリルさまの髪型を考えたり……!」
シェリーがぶつぶつとなにかを呟いている。シェリルはその様子を見て、ちらっとオレを見た。なんで今、こっちを見たんだ?
「あれー? ってことは、ボクらも服を用意しなきゃいけないの? ローブじゃダメ?」
「ローブはローブでも、礼装用のローブを新調したほうが良いでしょうね」
「ええ、これだっていい素材なのに!」
黒髪に黒ローブという全身黒コーデのリンジー。一応ローブにはこだわりがあるようだ。
「金色の刺繍を入れたら? 真っ黒よりは良いんじゃない?」
「なるほど、それは面白いアイディアだ。エリスくんの意見を採用しよう」
「エリス『さま』ですよ!」
「いいよ、『くん』で……。年上だし」
「はっはっは、見たまえカイル。エリスくんの心の広さを!」
ああもう、とカイルが額に手を置いて肩を落とした。まさかカイルを振り回す存在が現れるとはね。お茶を飲みながらここ二年の出来事を思い浮かべて、口角を上げた。
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