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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
再会 ――2
しおりを挟む「……えっと、それはオレが知っても良いことなの?」
「うん。きみには知って欲しかった。――だって、運命の糸が見えないから。エリスに最初に会ったとき、驚いたんだよ」
「運命の、糸?」
アレン殿下――いや、アランの口調からロマンチックな意味ではなさそうと推測する。彼はすっと自分の手を天井に翳す。そして、じっと自分の手を見つめて小さく息を吐く。
「僕らは神さまの駒。逃れる人もいるけれど、なぜか王家の人や公爵など、身分が高い人ほど雁字搦めに糸が巻き付いている。ルトナーク家の人たちにはその糸が見えないから……きっときみたちの運命は、きみたちに任せられているんだね」
「アランの運命の糸は、繋がれたままなの?」
「どうだろう? 自分のことはわからないや」
翳していた手を下ろして、アランは真っ直ぐにオレを見つめた。とても澄んだ瞳だ。どうすればこんなに綺麗な瞳になるのだろう、と思うくらいに。
「駒じゃなきゃ良いなとは思うけど、ね。僕は、僕がしたいからきみに話した、と思う。ただ、これももしかしたら決められた運命なのかもしれないけど……」
「いや、たぶんそれはない」
だって、『エリス』の記憶にはアレン殿下は出たけど、アランの存在はいなかった。これはもしかしたら、イレギュラーなことなんじゃないだろうか? こうしてオレたちが出会うこと自体が。
「それなら、嬉しいな」
「アランは『人形』じゃないと思うよ」
「……『人形』か、うまいね。うん、僕は逃れられているのかもしれないけれど、アレンは……」
苦しそうに胸元を掴むアランに、彼に近付いて背中を擦る。少しでも気が楽になって欲しくて。アランはもう一度深呼吸を繰り返すと、ぎゅっとオレの服を掴んだ。どうしたんだろうと彼を見ると、少しだけ、縋るような視線を送られた。
「……僕ね、きみと友達になりたいんだ、エリス。……なってくれる?」
「え、ええと、……もちろん」
まさかそう言われるとは思わなくて。でも、こんなに縋るような瞳で見られたら、断るなんてとてもできそうにない。オレの返事を聞き、ぱぁっと表情を明るくするアランは、とても嬉しそうに見えた。
「良かった、じゃあこれからよろしくね、エリス! いつか、王宮に遊びに来てください。城内を案内するから!」
「あ、うん。楽しみにしてるね」
「それじゃあ、僕はこれで。あ、もう一枚のハンカチはお礼だから受け取ってね」
「え、あ、アラン?」
すっとオレから離れて手を取ると、手の甲に唇を落した。ハンカチを押し付けるとパチンと指を鳴らし――次の瞬間には姿がなかった。――えっと、なんで手の甲にキスしたの。そしてどうやって姿を消したの。ああ、だめだ、キャパシティオーバーです。思わずその場に座り込み、混乱する頭を落ち着かせようとしたけれど、なかなか落ち着かなかった。
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