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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
優先順位 ――1
しおりを挟む「それはともかくとして、ヒューがエルフなのを隠しているのはなんで?」
「ここら辺に住んでいるエルフは珍しいので、注目を浴びるのがイヤなんですって。あまり目立ちたくないようです」
ヒューとは気が合いそうだなぁ。オレも目立ちたくない。ただ、彼の容姿で目立たないのは無理そうな気がする。やっぱり乙女ゲームの世界だから美男美女しかいないんだろうか。
エリスはアレかな、一般枠の攻略対象なのかな。当て馬の可能性もあり。この乙女ゲームの主人公、セシリア。彼女が誰を選ぶかで結末がいろいろ変わっているみたいだしな。
「あれ、そういえば学校に通うのはいつからだっけ?」
ぐちゃぐちゃな『エリス』の記憶を引っ張るよりは、聞いたほうが早いとカイルに尋ねると、カイルは「貴族は十四歳からです」と答えた。
「その年齢なんか意味があるの?」
「デビュタント前の人脈作りですかね? 十四歳なら、一通り家庭教師から習っていますからね」
学校に通って勉強する、というよりは友達作りを目的に通うってことか? いや、そりゃ友達がいるほうが良いけどさぁ……
「それって、オレも行かなきゃダメ?」
「ダメだと思います。卒業したら自由ですよ」
「カイルも通うの?」
「私はもう卒業しましたが、エリスさまが入学するときには護衛として同行します」
……ちょっと待って。カイルの年齢って十二歳だよな。いつ入学したんだ?
「いつ入学して、卒業したの?」
「九歳の頃に入学して、十歳で卒業しました」
たぶん、オレの頭の上にはクエスチョンマークがたくさん浮かんでいるだろう。一年で卒業できるもんなのか?
「もしかして、オレが毒を飲んでから?」
「ええ、いつでも入れるので。卒業してからは剣術を磨きました」
「……なんで、そこまでして……」
ぽつりとこぼれた言葉は震えていた。カイルはそっとオレの肩に手を置き、「約束は、果たすものでしょう?」と笑った。その笑みがあまりにも綺麗で驚く。――『エリス』にとっても、『咲耶』にとっても、彼は絶対的な味方であったカイルに、「……ありがとう」と自然とお礼が言えた。
今のオレの秘密を知っているのは、彼だけだし。複数の属性を持っていることを話しても、彼は絶対に他の人には話さないだろうという絶対的な信頼がある。
「私のほうこそ、ありがとうございます」
「え?」
なんでお礼を言われたのかわからなくて、カイルを見つめる。彼はただ口元に小さな笑みを浮かべていた。
「私を信じてくださって」
次いで届いた言葉に、首を傾げる。そんな様子のオレを見て、カイルはオレの片手を取り、甲に唇を落す。
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