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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

世界の始まり ――2

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「諸説ありますが、これが一般的な説ですね」
「あの分厚い神話系の本以外にも、説があるのか?」
「神さまがひとりの人間を独占したくて地上を作ったけど、人間は寂しさに耐えられず他の種族と交わったとか、魔族が地上を征服したくて片っ端から人間を襲ったとか、本当にさまざまですよ」
「……おおう、そんなにあるのか……」

 世界の始まりがさまざまなのは、ここが乙女ゲームの世界だからっていうのもあるのかな。いくつかのパターンが想定してあったとか? しかしこの世界にそんなに多くの種族がいたのか。知らなかった。猫耳と尻尾を持つポーラを見て驚いたもんな。……目覚めてすぐ驚く余裕があったのも謎だけど。

 案外、オレの精神って図太いんじゃ? そんなことを考えていると、カイルはオレの隣に座ってじーっと見つめてきた。

「なんだよ?」
「無属性の魔法がっておっしゃいましたけど、本当は違うことを考えていませんでした?」

 ……なんでバレているんだろう?

「な、なんでそう思うんだよ?」
「間があったので」

 それだけで!? と大きく目を見開くと、カイルがくすくすと笑う。たぶん、彼はヒュー似なんだろうなぁ。もうこのままカイルの家族のことを聞いて、いろいろ誤魔化しておこう。

「カイルのお母さんってどんな人?」
「綺麗な人ですよ。確か、奥さまと学友だったはずです。今は展開に遊びに行っていますが……」
「天界って……空?」

 ピンと人差し指を上に向ける。どんなところなんだろう、天界。

「はい。天界の一番下です」

 んん? 空の一番下? と首を傾げると、カイルが指を立てて丸を三つ作る。それは団子のように重なって、それぞれの場所に色がついた。魔法?

「一番上に神や女神が住んでいると言われています。真ん中は中間管理職だそうで、住んでいる天族はあまりいません。そして、一番下にたくさんの天族が暮らしています。地上に憧れた母は、おじいさまたちを説得して地上に降り、父と出会い結婚し、私を含む四人を産みました」
「え、四人も産んだんだ!」
「はい。見事に男の子ばかりを。女の子が欲しかったみたいなんですけどね」
「へぇー、みんなヒューに似ているの?」
「半々ですね。私と四男が父に、次男と三男が母に似ているらしいです」

 カイルの母親ってどんな人なんだろう。彼が綺麗と言ったのだからかなりの美人なんだろうな。そしてヒューは美形だから、美形と美女でこの眩しい容姿になったわけか、なるほど。

「ちょっとカイルの家族が並んでいる姿が見たくなった。そういえば、弟は何歳なの?」
「次男十歳、三男八歳、四男六歳です。現在地上に残っているのは父と私だけですが、そのうち帰ってくると思うのでそのときは紹介しますね」
「うん、楽しみにしてる」

 長男だったんだ、カイルって。それにしても見事な二歳差で産んだんだな。がんばったんだなぁ、カイルのお母さん。オレが想像のヒュー一家を楽しんでいると、カイルが眉を下げて微笑む。

「実際は普通の家庭なので、あまり期待しないでくださいね」

 そう言ってはいるけれど、きっと家族が大切なのだろう。瞳の奥は慈愛に満ちていた。
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