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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

仮説 ――2

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 話はおしまいとばかりと両手をパンっと打つ。シェリルに手を引かれながら一緒に部屋から出て行こうとして、ふと彼女が放った魔法のことを思い出した。そこで、もっと見てみたいなぁと見学のことを口にすると、ぴたりと足を止めて振り返り、これでもかというほど顔を近付けて念を押した。

「今のエリスは見張ってないと怖いんだもの」
「ええ、それどういう意味だよ?」
「言葉の通りよ! ねえ、カイル?」
「そうですね、まずは体力を取り戻してもらわないと」

 だよねー、なんて肩をすくめる。それから食堂へと歩き、オレらが手を繋いでいることに父さんと母さんは感涙して、「幸せだなぁ」と口にしていた。愛されてるね、オレたち。

 いつ食べても美味しいご飯をお腹が満たされるまで食べ、カイルと一緒に自室に戻る。お腹いっぱい食べて横になると牛になるっていうけど、もう少し太ったほうが良いのかもしれない。骨と皮な身体はイヤだ。

 ベッドに横になり天井を見上げる。カイルはこぽこぽとお茶を淹れていた。

「なぁ、カイル」
「はい、エリスさま」
「……ちゃんと食べてる? 寝てる?」

 オレに付き合ってばかりでカイルが食事をするところを、あまり見たことがない。おやつの時間は一緒に食べることが多いけど。カイルは目をぱしぱしと瞬かせて、それから花が綻ぶように微笑む。お茶を持ってベッドまで来たので、起き上がってカップを受け取った。

「良い香り」
「ハーブティーです。父さんが好きなんですよね、そのブレンド」
「へー……」

 ごくりと飲むとはちみつの甘さを感じた。ちょっと甘酸っぱい感じ。どんなお茶なのかさっぱりわからないけれど、食後にはちょうどいい。

「エリスさまは心配性ですね。ちゃんと食べていますし、寝ていますよ」
「ほんと?」
「ええ。それに、そもそも我々の種族はあまり眠らなくても問題がないのです」
「……はい? え? カイルって人間じゃないの……?」

 いや、どこをどう見ても人間だったけど。

「ハーフです。私の父はエルフ、母は天族なので」
「えええっ、耳、尖ってないじゃん!?」
「父さんは隠していますから、耳。魔法で」
「……魔法で隠せるのか。でも、なんか納得した」
「なにに納得されたのでしょうか」

 ヒューがイケメンでカイルが美少年な理由……とは言いたくないなぁ。カイルはこのまま育てはきっと、老若男女の視線をかっさらうイケメンになるんだろうなぁ。ちょっと羨ましい。

「えーっと、魔法の属性が無属性なこと」

 とりあえず、そう言って誤魔化してみた。
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