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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

シェリルという、双子の姉 ――2

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「いひゃっ!」
「――頼りなさい、あたくしたちを。エリスひとりで、全部解決しようとしないで」
「……なにに勘付いているんだよ、シェリルは」
「ふふん」

 口をへの字に曲げて言葉にすると、彼女は自信満々に笑う。ぱっとオレの頬から手を離す。引っ張られてジンジンと痛む頬を擦れば、シェリルはもう一度オレのことを抱きしめた。そして、安心させるように後頭部を優しく撫でる。――めっちゃ小さい子の扱いを受けている気分。しかも、『咲耶』だった頃は沙織サオリに良くしていたことだから、余計に複雑な気分になる。

「――ルトナーク家は、絶対に守るわ。領民たちも。絶対よ。だからね、エリス。好きにして良いのよ」
「シェリル?」
「本当に、あたくしが家を継いで良いのね?」

 ちょっとだけ身体を離して、真剣なまなざしで聞いてきたから、オレも同じような表情になり、こくりとうなずく。この家が嫌いなわけじゃないけれど、正直、オレに領地を守ることが出来るとは思わない。ひっそりと暮らしていけたら、それでいい。

「……なんか、ごめんな」
「なにが? あたくしが家を継ぐこと?」
「……ん」
「別に構わないわよ。あたくしはルトナークが好きだもの。それに領地経営って興味があったのよね。うふふ、王妃候補から外れたはずだし、好きな勉強ができるわ……!」

 ごうごうとシェリルの背中に意欲が燃えているのが見えた。

「そういえば、カイルは?」
「扉の前で立っているんじゃないかしら? ……そういえば、カイルも不思議といえば不思議よね」
「え?」
「だって、カイルは『人形』じゃないでしょ? たぶん、この屋敷のみんな、そうよ」
「……確かに、自由に生きているような気がするなぁ」

 メインキャラ、サブキャラ、モブという役割があるこの世界で、自由に動けるのはどういう人たちなのだろう。悪役令嬢の両親ってモブ扱いなのだろうか?

 きっと、メインキャラたちは『人形』だろう。自分の意思を持っていても、神さまの思うように動く、『人形』。サブキャラはどういう扱いなんだろう。モブっぽい人たち――それこそ、店員とか、広場で遊んでいた子たちは普通に見えた。

 シェリルの言動が結構ばらついていたのは、なんだったのだろう。オレに当たりがきつかったのはともかくして(そういう設定の『人形』だったろうし)、ところどころ素が出ていたようにも見える。……変なことを考えてしまった。

「なにか思いついた顔をしているわね」
「表情、変えてないはずなんだけど」
「あたくしに隠し事は無駄よ!」

 まぁ、オレも今のシェリルの考えていることはなんとなくわかるようになったからな。さっさと言えって、顔に書いてある。
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