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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
家族一緒に ――5
しおりを挟むマジマジと鏡に映る自分の姿に笑ってしまった。それに比べて、白のシャツと黒の長ズボン、さらに紺色の帽子で彼女の金色の髪を隠してしまえば、ぱっと見、男の子に見えるかも。しかもそれが妙に似合っているのだからすごい。
それに比べてオレの出来は……聞くな。
「ねえ、今日このまま過ごしちゃダメ?」
「なぁ、もしかしてこれが『面白いこと』なのか?」
えへ、と笑うシェリルに、オレは乾いた笑みを浮かべることしか出来なかった。
「オレに今日、この姿で過ごせと……?」
「ダメ?」
可愛くおねだりしてもダメ。オレは首を縦に振ってダメだと伝えるが、シェリルが試着室のカーテンを開けてしまった。
「お母さま、見てみて!」
「あらぁ、可愛いわねぇ」
シェリルは可愛いだろうよ。オレが女物を着ていることに気付くと、「エリスも可愛いわ!」と微笑む。親バカ! どこをどう見ればそう言えるんだ。助けを求めるように父さんとカイルに視線を向ける。オレの視線から逃れるように逸らされてしまった。
「靴も別のものにしないとね」
「……え、マジで言ってる?」
「ふふん。女の子の大切さを思い知りなさい」
その会話を聞いていた母さんが、店員に靴をお願いしていた。シェリルには茶色の革靴、オレにはピンク色の低いヒールの靴。サイズがぴったりで驚いた。ちなみにワンピースの丈は足首まである。さらに白い帽子を被らされた。
「似合っているわ」
「……ど、どうも……」
あまり嬉しくない言葉だよ、母さん。ちょっと諦めを感じつつ、カイルを見ると彼は笑顔で「とてもお似合いですよ」とフォローのつもりで言ってくれたのだろう。……トドメです!
スカート、違和感あるなぁ。
「男の子の服って楽ね。良いなぁ、動きやすくて」
「女の子の服って、動きづらい……」
結局その服屋でシェリルの気に入った服を数着買い(今オレらが着ている服も含めて)、屋敷に届けるように手配する。
「それじゃあ、次は広場に行こうか」
「この格好で?」
「似合っているから平気だよ」
それ平気って言えるのかな!? と考えつつ、広場に行くことになった。服屋を出ると店員たちが満面の微笑みを浮かべ、「ありがとうございました~」と見送られた。
そこからは、まぁ。家族で一緒に歩いた。もちろん、護衛の人たちも一緒だったけど。それにしても足元まであるワンピースの丈に、低いとはいえ慣れないヒール、さらにつばの広い帽子で前が見づらい。
すっと手が差し出された。ちらっと見るとカイルだった。転ぶと思っているんだろう。オレもそう思う。ちょっと躊躇ったけど、背に腹は代えられない。転ぶのもイヤだし。カイルの手を取ると、「ゆっくり行きましょう、お嬢さま」と微笑まれた。……なんだその、『お嬢さま』って。
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