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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

家族一緒に ――2

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「おはようございます、お父さま、お母さま」
「あ、ああ、おはよう、シェリルにエリス」
「おはよう、ふたりとも」

 シェリル、ユーインさん、キャサリンさんの順だ。じっとオレに視線が注がれる。きゅっと拳を握り、ゆっくりと前を向き、彼らをちゃんと見て微笑み、言葉を紡ぐ。

「おはよう、父さん、母さん」

 ――しん、と静寂が食堂を包んだ。その静寂は一瞬だけだったけど。ダンッと床を蹴る音が聞こえたと思ったら、ユーインさんとキャサリンさんに抱きしめられていた。シェリルと一緒に。シェリルはふふ、と微笑み、カイルは「良かったですね」と目で語っていた。涙を流すキャサリンさんと、肩を震わせているユーインさんに、オレはそっと目を閉じて抱きついた。

 どのくらい、そうしていただろうか。くぅ、とシェリルのお腹の虫が鳴いて、えへへと顔を赤くする彼女は可愛らしかった。キャサリンさんがすっと自分の涙を拭いて、ユーインさんの肩に手を置く。

「私もお腹空いちゃった。一緒に食べましょう? 家族、みんなで」
「ああ、家族団欒だんらん、だな!」

 もう一度オレを抱きしめてから、一緒に朝食を摂ることにした。パンとスープとサラダ。うん、少しずつだけど、それなりの量を食べられるようになった。良かった。和やかに過ぎる朝食の時間を終え、自室に戻ろうとするとシェリルに呼び止められた。

「待って、エリス」
「ん?」
「一緒に出掛けない?」

 シェリルがそう言い出したから、オレは目を丸くしてしまった。ユーインさんとキャサリンさん……いや、父さんと母さんが「それは良いな!」と賛同している。父さんは今日の予定をすべてヒューに任せるつもりでうきうきとしているのを見て、その日は家族全員で出掛けることになった。

 ヒューが手早く馬車を用意して、早速とばかりに馬車に乗り込んだ。家族とカイル、それから護衛の数人が一緒に行くことになった。護衛だから、と馬に乗ろうとしたカイルを馬車に引っ張り込んで、隣に座らせる。

「それにしても、どうしていきなり出掛けようと思ったの?」

 キャサリンさんの問いに、シェリルはちらっとオレを見てから答えた。

「あたくしもお店で服を買ってみたくなったの。ダメかしら?」
「ふふ、シェリルも自分の好みの服を探したくなったのね」
「シェリルにはなんでも似合うと思うけどなぁ」
「まぁ、お父さまったら!」

 いや、オレも父さんに同意するけどね。ほのぼのとした優しい雰囲気。記憶が戻る前だったら居心地が悪いと感じただろう。でも、今はそんなことを感じない。引っ張り込んでしまったカイルは思っているかもしれないけれど、成人済みの男性数人と並んで馬で移動するカイルを想像して、身体のほうが先に動いたのだ。

「あたくしね、本当はエリスが前に持っていたようなパステルカラーの服を着てみたかったの!」

 今の服も充分に合っているとは思う。シェリルの肩まである金髪に、ちょっときつそうに見える目尻の上がったブルーサファイアの瞳。顔立ちが美人系だから、服もそれなりに派手じゃないと彼女の可愛さ……美しさ? がかすんでしまう。こうしてみると母さんとそっくりだよなぁ。
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