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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

そして現在 ――2

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◆◆◆

 四日目、だいぶ思考もスッキリとして現状を考えることが出来るようになった。熱も下がった。それはシェリルも同じようで、パジャマ姿のままオレの部屋に来て、なぜか飛び跳ねていた。

「自由に動けるし、話せる!」

 どうやらシェリルも、『エリス』の言葉を借りるなら『人形』だったようだ。きゃあきゃあとはしゃぐ姿を見ながら、素はこんな子だったのかと微笑ましく思った。せっかく来てくれたのだから、このまま今後のことを話し合うことにした。もちろん、カイルも一緒に。

「まずは、話を整理しよう。『エリス』はケーキを食べて倒れたんだよな?」
「そうよ。公爵さまからもらったケーキを、あたくしから取り上げてそれを食べたあとすぐに倒れたの。ジュースを飲んでいたかは覚えていないわ。三年も前のことだし」
「ちなみにそのときカイルは?」
「父とおりました」
「……公爵が怪しいってことになるんだけど」

 伯爵家の子どもの誕生日パーティーに、公爵が来るか、普通? 身分違い過ぎない? もしかしてロから始まりンで終わる性癖の人? それとも、ネから始まりアで終わるほう? もしくは両方? なんて記憶にない公爵の性癖を考えてしまった。

 オレが変な顔をしているからか、シェリルが首を傾げた。知らなくて良いことだって、世の中たくさんあるんだよ、シェリル。

「なぁ、なんでオレを……『エリス』を嫌っていたのかわかる?」
「近くに居ると頭痛がしたの。それに……エリスもあたくしを嫌いだと思い込んでいたし」

 つまり、互いに嫌い合っていると思い込んでいたわけか。ん? でもそう考えると、オレが『話がある』って言ったときにOKしたなぁと彼女を見る。シェリルはその視線に気付いて、バツが悪そうにそっぽを向いた。

「なぜか、あんたは平気だったのよ。椅子に座っていたあんたを引っ張ったときに気付いたの。触れるし、近くに居ても頭が痛くならないって。だけど、それを話そうとしても、口から出るのは攻撃的な言葉だけで……。ねえ、あたくしたちが見たのは、きっと『エリス』の過去よね?」
「だと思う。どうして彼の過去が見えたのかは謎だけど」
「あ、すみません。それは恐らく、私が魔法陣にちょっと細工をしたからだと思います」

 ……ホワイ? おっとあまりに驚きすぎてカタカナになってしまった。英語苦手だったから、仕方ないよな。

「それってどういうこと……?」
「『エリス』さまのお話を聞いて、彼の苦悩を知らずに生きるのは失礼かと思いまして。魔法陣に条件を付け足したのです。あなた方はその条件を知らずにクリアし、彼の過去を知ったのです」

 ――そういえばこいつ、天才だった。

「カイルは行動を縛られていないの?」
「縛られている感じはしませんね」

 行動を縛られている人と、いない人がいるってことか。……もしかして、このゲームの主要とサブキャラが物語のために『人形』になっているのかもしれない。ええ、でもカイルの容姿でモブってことはなさそうだし……とカイルをマジマジと見ると、不思議そうに見つめ返された。
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