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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
誰かの記憶 ――3
しおりを挟む――オレは、一体なにを見ていたんだろうか。呆然としていると隣にはシェリルがいて、顔を蒼くしていた。これは……『エリス』の記憶? 彼の魂はあの日消えてしまったんじゃなかったのか?
「なんなのよ、これ……!」
「シェリルにも見えているのか?」
「あんたにも見えているの!?」
弾かれたように顔を上げるシェリルにうなずいた。もしかして、これが乙女ゲームの内容なのか? だとしたら、なんて怖いゲームをしていたんだ、沙織! ハッ! 実は乙女ホラーゲームだったのでは!?
「まだ、続きがあるみたい……」
シェリルがぽつりと呟いて下に視線を向ける。オレも続きを見ることにした。
◆◆◆
何度目かのループで、法則性があることに気付いた。
セシリアが誰も選ばない未来では、姉さんだけが断罪された。それも、やっぱり殿下の差し金で。僕のアレン殿下への信用度も信頼度も地の底まで下がったのはとても早かった。そして、ループを繰り返してわかったことがある。
第一に、姉さんは五歳頃に僕を嫌う。そしてそのまま成長して僕らは姉弟の仲を取り戻すことが出来ない。――何度か姉さんに近付こうとしたけど無理だった。話しかけようとすると頭痛に見舞われるのだ。恐らく、それは姉さんも。だから、僕らは不仲まま学園に通うことになる。
第二に、姉さんが十四歳の頃、アレン殿下との婚約が決まる。ループするときに殿下に聞いたことがある。なぜシェリルを選んだのかを。その答えは酷いものだった。自分に惚れているのが目に見えてわかったので、懐柔しやすそうだったと。……姉さんにはぜひ、ポーカーフェイスを覚えて欲しい。
第三に、どうあがいても姉さんは断罪される。抗おうとしても、行動が制限されてしまう。なぜなのかはわからないけれども、姉さんを助けようとすると動きが止まる。心にもないことを言ってしまう。――まるで、人形のようだ。逆らえずにいる、操り人形。
『エリスさま、そんなに魔法書を読んで……根を詰めすぎていますよ』
『カイル……、うん、もう、時間がないから……。今度こそ、成功させるんだ』
魂の返還の魔法は難しく、試しても成功しなかった。だが、諦めるわけにはいかなかった。姉さんを救うために、何度も何度も改良を重ねて、ループを繰り返した。だからもう――終わらせたかった。疲れ始めていたのかもしれない。
『ごめんね』
『エリスさま……?』
『きみは長生きしてね』
カイルは眉を下げて微笑んだ。僕の覚悟を、カイルは知っている。だが、それからも数回ループしてしまった。いろいろと試しているのにループするのは本当に謎だった。
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