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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
意外と ――2
しおりを挟むシェリルはカップを持ち上げて、ふぅふぅと息を吹きかけて冷ましている。猫舌なのかもしれない。……昔、沙織と一緒にそうやってお茶を飲みながらゲームをしたことがあったなぁ。こたつに足を入れて、真剣にテレビゲームをしていた頃を思い出す。対戦式のパズルゲーム。落ちゲート言われているヤツ。懐かしい。
オレも椅子に座って、カイルが淹れてくれたお茶を飲んだ。シェリルも一口飲んで、カップをソーサーに戻す。
「それで? あたくしに話があるってなんなのよ?」
こっちの喋り方が素かな。睨むようにジト目でこちらを見るシェリルに一度目を閉じて深呼吸をしてから目を開けて彼女を真っ直ぐに見つめる。心臓がバクバクと早鐘を打っているのは、『エリス』の身体だからだろう。
「オレを嫌っている?」
ストレートに尋ねると、シェリルは一瞬目を大きく見開き、それからテーブルの上に肘をつき両手を組んでその手の上に顎を乗せてから、プイっと横を向く。まるで、オレの視線から隠れるように。
「当たり前でしょ。今更、なんでそんなことを聞くのよ!」
「なんで? 嫌われることをした?」
エリスの記憶がないからなんとも言えないけど、この子を傷つけるをエリスがしたのか、それともただ単に周りにからかわれたとか? 仲の良すぎる姉弟って、結構からかわれるもんなぁ。って考えていたけど、シェリルはぐびぐびとお茶を一気飲みした。そして、カチャン! と音を立ててカップを置く。
「だって、あんたはエリスじゃない」
「――!」
シェリルの言葉にカイルの肩がビクッと跳ねた。……なんで、そのことを知っているんだ、シェリルは。
「エリスのことはあたくしが一番わかってた。一番知ってた。なのにあんたのことは全然わからない! だからあんたはエリスじゃない!」
双子特有のシンパシーかなにかがあったんだろうか。シェリルの言葉はあまりにも確信を突いていて、オレは口を閉ざした。ふるふると身体を震わせるシェリル。……ん? でも五歳の頃から嫌っているんじゃなかったっけ……?
「返してよ! あたくしの『エリス』を!」
感情的にそう叫ぶシェリルに、オレは「……ごめん」と口にすることしか出来なかった。涙を浮かべる彼女に近付き、涙を拭おうと手を伸ばしたらパシッと振り払われた。
そしてその瞬間、ずきっと頭が痛んだ。それは彼女も同じだったようで、頭を抱えて「なに、これ……!」と痛みを耐えている。
「エリスさま! シェリルさま!」
オレらの名を呼ぶカイルの声は震えていた。その声が段々と遠くなって――……
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