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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
意外と ――1
しおりを挟むふーん、意外と見ているんだ、オレのこと。体力が戻ってないことは確かなので、微笑みを浮かべながら話を続ける。
「まぁね。だから見学。魔法ってどんなものなのか見せてよ」
「……なんであんたに」
「イヤなの?」
シェリルはむっとしたように頬を膨らませた。ははは、なんか可愛い。でも笑ったほうが可愛いと思う。せっかく美少女に生まれてきたのに、もったいない。
「まぁ良いわ! あたくしの魔法の威力に驚くんじゃないわよ!」
「わー、楽しみだなー」
棒読み。正直魔法がどういうものなのかわからないから、どれくらいの威力なのかもわからないや。シェリルはすっと杖を前方に向けて目を閉じ、なんか明るいオーラ? みたいなものを杖の先端に集めてカッと目を開き、銃を撃つかのように杖を振り上げた。放たれたのはテニスボールくらいの炎の球。結界に当たって砕けた。
パチパチパチ、とヒューとカイルが拍手をする。魔法って無詠唱なんだ。こう、ファイアーボール! って叫ぶのかと思っていた。
「どう!?」
自信満々の笑みを浮かべてオレを見るシェリル。だからオレも拍手を送った。
「すごいね!」
「ふふん、そうでしょう、そうでしょう! って違う! あんたに褒められたくもないわ!」
面白い子だなー。たぶん、さっき一瞬見せた笑顔が彼女の素だと思うんだけど。なんでこんなにオレを嫌うのか……いや、違うな。嫌うというよりも、認めようとしていない?
「シェリル、あとで話があるんだけど」
「あたくしはなくってよ!」
「オレにはあるんだ。だから、時間をくれないか?」
「……良いでしょう。じゃあ、夕食が終わった一時間後に行くわ。あんたの部屋に」
すっと目を細めてオレを睨むシェリル。オレはゆっくりとうなずいた。カイルとヒューが心配そうにこっちを見ていたから、平気だよと安心させるように微笑む。
約束を取り付けたあと、三十分くらいシェリルの魔法の練習を見学していた。狙った的から外れたときはヒューが消しているから、なんかすごい。シェリルの魔法の精度は、十発中六発当たるくらいみたいで、これが十発全部当たるようになると、次のステップに進めるらしい。
オレが最初に習うときも同じなんだろうか……。日本には魔法がなかったから、ちょっと楽しみ。その前に体力のなさをなんとかしないといけないようなぁ。魔法より先に体力作りが先だ。
シェリルが魔法の練習を終えてから、一緒に食堂まで行ったらユーインさんとキャサリンさんがめっちゃ嬉しそうにオレらに近付いて抱き着いてきた。……心配を掛けているのがなんだか申し訳ない。
家族で夕食を摂って、食べ終えてから部屋に戻る。一時間後にシェリルと話し合いだ。なんだかじっとしていられなくて、部屋をウロウロと歩き回っているとあっという間に一時間過ぎたらしく、扉がノックされた。シェリルだろうと思い、扉まで行きゆっくりと開けた。そこに居たのはやっぱりシェリルだった。カイルと一緒だ。
「お茶もご用意しました」
「気を遣ってくれたのか、ありがとう、カイル。シェリルも入って」
カイルとシェリルを招き入れて、扉を閉める。カイルは丁寧にお茶を淹れてくれた。それからテーブルの上にカップを置き、椅子を引きシェリルを座らせる。その姿がとてもスマートに見えて、思わず心の中で「おお」と呟く。
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