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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
秘密の場所 ――2
しおりを挟むオレが今いる世界はここなんだし、素直にここで生きていく決意を固めないといけないんだろうなぁ。なんだかんだで結構未練があるのは仕方ない、よな。
他人事のように振舞うのはダメだよな。パンっと両手で頬を叩く。カイルが「エリスさま!?」と慌てたようにオレの手を取って、頬から外す。
「まだわからないことだらけだ。オレも、この世界も」
「エリスさま……?」
「ちょっとシェリルのところに行ってくる。どこに居るのかわかる?」
「この時間なら……恐らく、魔法の練習をしていると思います」
前に見た場所だろうか。オレもいつか魔法の練習が出来るのかな、と考えていたらカイルに、
「エリスさまはもう少し、体力をつけてからですよ」
「……やってみたいのバレた?」
こくりと首を縦に動かすカイルに、苦笑を浮かべて肩をすくめた。
こそっと屋上から抜け出し、シェリルが魔法の練習をしている場所へ向かう。なぜか彼女の場所がわかる。足が勝手に動いているような感覚。どうやら裏庭で魔法の練習をしているようだ。
「へー、こうなってるんだ」
「魔法の練習ですからね。念のために結界が張られています。シェリルさまは火属性の魔法を練習しているので、燃やさないためにも」
「あー……、そうだな。せっかく綺麗に咲いているもんな」
納得しつつ彼女の魔法の練習を観察する。そばにいるのはヒューだな。ヒューが教えているのかな。そういえば、彼の声をはっきりと聞いた覚えがないや。
「ヒューって話せるんだよな?」
「え? ああ、はい。話せますよ。ただ、声がちょっとコンプレックスになっていて、出来る限り話さないようにしているみたいです」
「そうだったんだ」
じゃあいつか聞ける日が来るのかもしれない。ヒューはシェリルの魔法を眺めて、危ないと思ったときには魔法を消していた。彼の属性が気になってきた。いや、それを言えばカイルも謎だ。
「どうしました? そんなに見つめて」
「属性の謎について考えてた」
「……気になりますか? 私の属性」
「そりゃあね」
カイルをじぃっと見ていたことに気付かれていたようだ。こてんと首を傾げて自身を指し、どこか楽しそうに目元を細めるのを見て、「言いたくなかったらいいよ」と口にする前に言葉が紡がれる。
「無属性です。内緒ですよ」
「無属性? そんなものもあるんだ」
ひそひそと小声で話す。ユーインさんに聞いていた属性以外にもあるのかと感心していたら、カイルは小さく笑みを浮かべてヒューの元へと向かった。ヒューとカイルが並ぶと、美青年と美少年というビジュアルなので、とても絵になる。さらにシェリルも黙っていれば美少女だから、さらに絵になる。うーん、あの三人が一緒に居るのを見るのは、眩しいなぁと目を細めた。
カイルはこっそりと隠れているオレを呼んだ。シェリルが「なんであんたが、あたくしの邪魔をするのっ!」と大きな声を出した。
オレは三人に近付いて、後頭部に手を置いた。
「邪魔っていうか、魔法の練習ってどんなものかと思って。オレもそのうち習うだろうし、見学してもいいだろ?」
「フン! まだそんなに体力も戻ってないくせに!」
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