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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
クローゼットの中身を一新! ――2
しおりを挟む「はい。これからもこういうシンプルな服でお願いします」
心からのお願いを口にすると、カーメルさんはちょっと残念そうだったけど、うなずいてくれた。ああ、良かった。
それにしても、これで仮縫いの状態なんだろうか。調整しなくてもこのままで良さそうなんだけどなぁ。
「あと三日もいただければ、完璧な状態になりますわ」
「三日で? ……あまり無理しないでくださいね」
「うふふ、ありがとうございます。インスピレーションを得たので、より良い状態でお渡ししますね」
元の服に着替えてから、カーメルさんと向かい合う。言葉を交わして、あと三日もすればこのカラフルなクローゼットの中身が一新できるのか、と考えたら、ワクワクしてきた。でも、一週間で十着も作ってくれたから、無理をしているんじゃないかと心配になった。
カーメルさんは鞄に服を詰め込み、「それでは、三日後に」と頭を下げて部屋から出て行った。見送ろうと思ったら、丁重に断られた。
それから三日後、シンプルでとても上品なモノクロの服が大量に運ばれてきた。クローゼットの中の服を入れ替えて、シンプルなもので埋められたクローゼットを見て、ニヤニヤしているとカイルが「良かったですね」と声を掛けてきた。
「ありがとうございます、カーメルさん!」
「気に入っていただけて嬉しいですわ」
やり遂げた達成感からか、カーメルさんは清々しい笑みを浮かべていた。ただ、化粧をしていてもうっすらと目の下に隈が見えたから、相当無理をさせたみたいで申し訳なくなった。
「カーメルさん、本当にありがとうございます」
心からのお礼を口にして、頭を下げる。カーメルさんは「それがわたくしの仕事ですから」と胸を張った。
その表情は仕事を誇りに思う大人の女性という感じで、凛としていた。格好良いな……! こんな大人になりたいとしみじみと思った。
「あ、それとカイル。こちらへ」
「え? あ、はい」
カーメルさんに呼ばれて近付いて行くカイル。カーメルさんはごそごそとリボンを取り出して、彼の首元にリボン結びをした。
「ヒューからですわ」
「父から?」
目を丸くするカイルに、そんなに意外なことなのか? と水色のリボンを親指と人差し指でリボンを摘まむ姿を見ながら首を傾げていると、カイルはリボンから手を離してハッとしたように顔を上げた。
「……これ、父が魔法を掛けていますね?」
「あら。やっぱりわかるのね。すごいわ」
ぱちぱち、と拍手をするカーメルさん。渋い顔を浮かべるカイルという、なかなか見ない彼の一面に、こういう年相応な反応をすることがあるのか、と新鮮な気持ちになった。
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