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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
デザイナー ――6
しおりを挟む「今度、エリスさまの服にも魔法を掛けましょうか? そうですね……居場所がわかる魔法なんていかがです?」
「居場所って……」
「万が一のために」
誘拐される心配でもしているんだろうか。オレよりも派手なシェリルのほうが狙われそうだけどなぁ。
「せめて防御力を上げる系にしてくれ……」
GPS機能よりはそっちのほうが欲しいよ、オレは。あれ、でも居場所のわかる魔法ってどんな属性になるんだろう? 魔法の世界はよくわからないや。……まだ習ってもいないしな。
ユーインさんとカーメルさんの話は盛り上がって、終わりそうにない。そしてそのうち外が暗くなってきて、カーメルさんと一緒に夕食を食べることになった。暗くなってきたから、今日はこのまま泊っていくことになった。
食堂でカーメルさんがいることに気付いたシェリルが、足取り軽く彼女に近付いて、
「カーメルおばさま、お久しぶりですっ!」と明るい声を出してはしゃいでいた。
「ごきげんよう、シェリル。以前会ったときよりも身長が伸びたようね」
「わかりますの? ちょっと高くなりましたわっ。カーメルおばさまの目はいつも的確ね。あ、この時間に食堂にいらっしゃるということは、お泊り? なら、今日は、あたくしの部屋で一緒に寝ましょう!」
「まあ、嬉しいですわ、シェリル。隣で眠ってもよろしいかしら?」
「ええ! おばさまなら大歓迎よ!」
そんな会話をしているシェリルとカーメルさん。キャサリンさんが和んだように目元を細めていたのが印象的だった。それにしても、シェリルはカーメルさんのことが大好きなんだな。はしゃいでいる姿は年相応に見えて、微笑ましい。
シェリルのドレスももう少しシンプルなほうが彼女に似合いそうな気がするけれど、こればかりは本人の趣味だろうから口を挟まないでおこう。
会話しているふたりを眺めていたら、バチっとシェリルと視線が合った。そして、フン! とばかりにそっぽを向かれて、カーメルさんにわざとらしく抱きつくシェリルを見て、肩をすくめることしか出来なかった。
夕食は和気あいあいとした雰囲気で、カーメルさんとキャサリンさん、シェリルが服のことで話し合い……というかヒートアップしていった。ドレスのことになると熱くなるんだな、となんか感心してしまった。
夕食を食べ終えて、こっそりと食堂を出る。女性三人の服装の話はまだ続いていたが、ユーインさんは「どのドレスも似合っているのだから、そんなにヒートアップしなくても……」と、眉を下げていたのが見えた。
カイルと一緒に自室に戻りながら、ふと気になったことを口にする。
「……カイルのお母さんも、ドレスのことになると燃え上がるタイプ?」
「どうでしょう。どちらかといえば、父のほうが母の服装に口を出すタイプかと」
カイルの答えはあまりにも意外で、目を数回瞬かせた。
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