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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
デザイナー ――5
しおりを挟む「あら、カイルにも声を掛けていただけるなんて。うふふ、この子もちょっとは丸くなったのね?」
ぱぁっと表情を明るくして、カイルの頭に手を伸ばして撫でるカーメルさん。ユーインさんも近付いていて、うんうんと感慨深そうに首を縦に動かしていた。
「丸くなった?」
「最初に会ったときは、ピリピリしていましたもの」
「いきなり身体を触られたら、誰だって警戒しますよ」
「か、身体を触る?」
「あら、歓迎のハグでしたのに……」
残念そうに頬に手を添えて息を吐く。つまり、初対面でいきなり抱きつかれたということか。それはちょっと混乱するかもしれないなぁと肩をすくめる。
「……というか、カイルとカーメルさんって会ったことあるんですね」
「ヒューの服を注文するときにね。ちなみにカイルが着ている服も、エリスが着ている服もカーメルがデザインしたものだよ」
そう言いながらオレの両脇に手を差し入れ、ひょいと抱き上げるユーインさん。そしてそのままソファまで移動し、すとんと座らせた。
「お菓子もお茶もまだあるからね、たくさんお食べ」
「……いや、これ以上食べるとご飯が食べられなくなるので……」
「まぁまぁ。カーメル、ついでにいろいろ頼みたいことがあるのだが」
「お聞きしましょう」
カーメルさんもソファに座る。オレはカイルを呼んで、ソファの隣をぽんと叩く。カイルは一瞬躊躇ったようだけど、ユーインさんを窺うように見た。ユーインさんは声に出さずに口を動かし、カイルはほっと安堵したように息を吐いた。
「屋敷の使用人の服に……」
ユーインさんが使用人の服をオーダーし始めた。オレはくいくいとカイルの服の袖を引っ張る。カイルが「どうしました?」と首を傾げる。こっそりと「カーメルさんって、ルトナーク家専属なの?」と尋ねると、カイルは緩く首を横に振った。
「いいえ。ですが、ルトナーク一家と使用人の服を作っていますね」
「すごいな」
どのくらいの従業員がいるんだろう? ちょっと想像が出来ない。
デザインから服を作るまでって大変そうだけど、採寸していたカーメルさん、とても楽しそうだったなぁ。
ん? ってことは、じっとカイルの服を見つめる。その服もカーメルさんが作ったんだろうか?
「エリスさま?」
「いや、護衛ってわりに薄着なんだな、と思って」
「どうも鎧は苦手でして……」
子どもの体力だし、それは仕方ないって。逆に十二歳のカイルがガッションガッション音の鳴る鎧を身に着けていたら、重くないのかってツッコミを入れたくなるだろうし。
「ああ、でもご安心ください。この服は特殊なので」
「特殊?」
「はい。魔法が掛けられているのです。私が掛けたんですけどね」
魔法を自分で掛けた? 服に? ……そういえば天才だっけ。そんな人がオレの護衛だなんて、なんか……うん、才能を潰しているみたいで申し訳ないな……
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