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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

目的地 ――2

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「カイルも食べなさい」
「しかし……」
「私が許可する」
「……かしこまりました。ありがとうございます」

 カイルはちょっと困惑したように声が震えていたけれど、ユーインさんに促(うなが)されてオレの隣に座った。

「エリスも。たくさん食べなさい」
「……はい」

 たくさん食べるかは少し不安だけど、目の前のお菓子は美味しそうなので手を伸ばす。マドレーヌを手に取って食べてみた。おお、美味しい。

「気に入ったみたいだね、良かった」

 そう言いながらユーインさんもマドレーヌをぱくりと食べた。お菓子に手をつけていないのはカイルだけになった。

「マドレーヌ美味しいよ」
「あ、ありがとうございます」

 ひょいとマドレーヌを取ってカイルに渡す。カイルは丁寧に受け取って、オレとユーインがじーっと見ている中、カイルはマドレーヌを口にする。もぐもぐと食べる姿は年相応に見えてなぜかホッとした。

「どうだい?」
「とても美味しいです」
「カイルも気に入ったのなら良かったよ」

 そう言って目尻に皺を刻んで微笑む姿を見て、カイルも可愛がってもらっているんだなと感じた。

「それで、どうしてシェリルのほうが領主に向いていると?」

 ユーインさんはオレのことを見つめながら尋ねてきた。オレは一度お茶を飲んでから、真剣な表情を浮かべて口を開く。

「シェリルは努力出来る子だから」
「エリスだってそうだろう?」
「でも、オレよりもシェリルのほうが向いていると思うんだ。二属性の魔法を使いこなせるように努力しているし、彼女のように芯がしっかりしている子のほうが良いと思う。領主の仕事って周りとの関係も大事だと思うし……」

 そしてそれには、『咲耶』の記憶があるオレではなく、シェリルが一番だと考えた。あの子が将来をどう考えているのかはわからないけれど、少なくともオレが領主を継ぐ気がないことを、先に話しておくべきだと考えたのだ。

「しかし、女性が家を継ぐのは……」
「え、この国女性を伯爵に出来ないんですか?」
「例がないわけではないが……」

 あ、じゃあちゃんと爵位を継ぐことは出来そうだな。

「しかし、女性に爵位を継がせるのは珍しいことなんだ」
「変な話ですね」
「変?」
「男性と女性を差別しているように感じます。女性にだって能力がある人だっているし、男性にだって能力がない人もいるでしょ?」
「……まぁ、否定はしないけどね」

 オレの言葉にユーインさんは目を大きく見開き、それから考えるように少しだけ黙り込んでから、言葉を紡いだ。
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