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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
目的地 ――1
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なんだかドキドキするなぁ……なんて思いながら、反応を待つ。カチャリと音を立てて扉が開いた。そして、オレらに気付くと、目を丸くする。
「エリスにカイル、どうしたんだい?」
「えっと、執務室がどこにあるのか、カイルに案内してもらったんです」
「そうだったのか。……じゃあ、ちょっと入ってみるかい?」
そう。カイルに頼んだのはユーインさんの執務室の場所だった。どんな場所にあるのか知らなかったから。
「仕事の邪魔じゃないですか?」
「邪魔じゃないよ。ちょっと休憩しようと思っていたところだしね」
ほら、入って入って、と言われて、執務室に入ることにした。執務室に入って一番に目に入ったのは、山のような書類。山の数がたくさんあって、ユーインさんはとても忙しい人なのだと思った。
「そこに座って」
執務室の左側にソファとローテーブルが設置してある。言われた通りにソファに座ると、カイルはオレの斜め後ろに立った。ユーインさんに視線を向けると、彼は自分の机に向かいベルを鳴らした。すると、すぐに「旦那さま、ご用でしょうか」と声が聞こえた。……一分も経ってないのにすごいな。
ユーインさんはお茶とお茶菓子を用意するように伝えると、こっちに近付いてオレと向かい合うように座った。
「それにしても、エリスが執務室に来たがるなんて……」
と、どこか嬉しそうにニコニコと笑うユーインさん。オレはちらりと書類の山に目を向けてから、気になったことを口にした。
「ユーインさんは、領主、なんですよね?」
「そうだね。陛下からこの地を賜り、治めているよ。まぁ、私よりも優秀な部下が多いから、楽はさせてもらっているけどね」
「優秀な部下?」
「そう。エリスが知っているのはヒューかな。彼もとても優秀だからね。騎士団のみんなも、魔導士のみんなも、それぞれ優秀だからね。私が出来ないことをしてくれる、とても良い部下だよ」
ユーインさんは自分の部下を思い出しているのか、とても柔らかい表情になった。信頼と信用を寄せる仲間なのだろう。
「そんなことを聞くなんて、エリスは領主を目指したいのかな?」
「……いいえ。オレよりもシェリルのほうが向いていると思います」
ユーインさんは意外そうに目を丸くした。そして、疑問を口にしようとしたが、その前に扉がノックされた。お茶とお茶菓子を持って来てくれたのだろう。
「入れ」
短く声を出すユーインさん。こういう姿を見ると、普段の『父親』ではなく『領主』という一面が見えて、不思議な気持ちになった。自分の知っているユーインさんの顔ではないからだろう。
メイド服の女性はてきぱきとお茶とお茶菓子をローテーブルに置いて、一礼してから出て行った。
「エリスにカイル、どうしたんだい?」
「えっと、執務室がどこにあるのか、カイルに案内してもらったんです」
「そうだったのか。……じゃあ、ちょっと入ってみるかい?」
そう。カイルに頼んだのはユーインさんの執務室の場所だった。どんな場所にあるのか知らなかったから。
「仕事の邪魔じゃないですか?」
「邪魔じゃないよ。ちょっと休憩しようと思っていたところだしね」
ほら、入って入って、と言われて、執務室に入ることにした。執務室に入って一番に目に入ったのは、山のような書類。山の数がたくさんあって、ユーインさんはとても忙しい人なのだと思った。
「そこに座って」
執務室の左側にソファとローテーブルが設置してある。言われた通りにソファに座ると、カイルはオレの斜め後ろに立った。ユーインさんに視線を向けると、彼は自分の机に向かいベルを鳴らした。すると、すぐに「旦那さま、ご用でしょうか」と声が聞こえた。……一分も経ってないのにすごいな。
ユーインさんはお茶とお茶菓子を用意するように伝えると、こっちに近付いてオレと向かい合うように座った。
「それにしても、エリスが執務室に来たがるなんて……」
と、どこか嬉しそうにニコニコと笑うユーインさん。オレはちらりと書類の山に目を向けてから、気になったことを口にした。
「ユーインさんは、領主、なんですよね?」
「そうだね。陛下からこの地を賜り、治めているよ。まぁ、私よりも優秀な部下が多いから、楽はさせてもらっているけどね」
「優秀な部下?」
「そう。エリスが知っているのはヒューかな。彼もとても優秀だからね。騎士団のみんなも、魔導士のみんなも、それぞれ優秀だからね。私が出来ないことをしてくれる、とても良い部下だよ」
ユーインさんは自分の部下を思い出しているのか、とても柔らかい表情になった。信頼と信用を寄せる仲間なのだろう。
「そんなことを聞くなんて、エリスは領主を目指したいのかな?」
「……いいえ。オレよりもシェリルのほうが向いていると思います」
ユーインさんは意外そうに目を丸くした。そして、疑問を口にしようとしたが、その前に扉がノックされた。お茶とお茶菓子を持って来てくれたのだろう。
「入れ」
短く声を出すユーインさん。こういう姿を見ると、普段の『父親』ではなく『領主』という一面が見えて、不思議な気持ちになった。自分の知っているユーインさんの顔ではないからだろう。
メイド服の女性はてきぱきとお茶とお茶菓子をローテーブルに置いて、一礼してから出て行った。
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