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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
協力関係 ――2
しおりを挟むすっと手を差し出すと、カイルは一瞬目を見開いて、それからすぐにオレの手を取りぎゅっと握る。そして、なにかを確かめるようにじっとオレの目を見た。
「カイル?」
「そろそろ朝食の時間ですよ」
「あ、すっかり話し込んじゃったな。じゃあ、食堂に行くかぁ」
タイミングよくぐぅ、と腹が鳴った。それを聞いたカイルは、手を離してぽんとオレの背中に手を置き、「行きましょう」と食堂へ歩き出す。
えっと、協力者を得たってことで良いんだよな?
ちらりとカイルの顔を見ると、考えていることがまるでわからない笑みを浮かべていた。十二歳が浮かべる表情か? と考えたけれど、オレはカイルのことを知らないからなぁ。いつか、彼の笑みの理由を知ることがあるんだろうか?
そんなことを考えながら食堂まで歩いた。カイルが扉を開き中へ入るように促(うなが)す。
食堂に入るとすでに全員が揃っていた。シェリルもきちんといつもの席に座っていて、内心ほっとした。でもまぁ、やっぱり睨まれたんだけど。ギロリと鋭い眼光をこっちに向けるシェリルに気付かないふりをしていつもの席に座ると同時に、料理が運ばれてきた。
美味しそうな匂いに食欲が刺激される。食事前の祈りを終えて、パクパクと勢いよく食べていたらユーインさんとキャサリンさんが驚いていた。
「とってもお腹が空いていたのね?」
「そんなとこです」
少しずつ、食べる量が増えていっている、とは思う。とはいえ、オレが記憶している十歳の頃の食事量にはまだ遠い。あの頃くらい食べられるようになるのはいつのことだか。
とりあえず、カイルという協力者を得たことで少しだけ心が軽くなった。まだ十二歳の子を協力者に選んでしまったことに、ちょっとだけ罪悪感を覚えるけど。
そう、考えてみればまだカイルは十二歳なんだよなぁ。それなのに、オレの護衛ってどんだけ優秀なんだ。
「美味しいかい?」
「今日も美味しいですよ。本当に」
なんと今日はスープとサラダ、ロールパン一個を完食だ。この調子なら、そのうちメイン料理も食べられるかも? と淡い期待を抱きながら食事を終える。
「エリス、シェリル、今日はどんな風に過ごす予定かな?」
「オレはカイルと一緒に遊びます」
決定事項。すまん、カイル。巻き込んで。ユーインがちらりとカイルに視線を向ける。彼はこくりとうなずいた。
「シェリルは?」
「魔法の練習。上手に使えるようになりたいもの!」
目をキラキラと輝かせて、シェリルはぐっと両手の拳を握った。目標があることは良いことだな。
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