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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
買い物 ――2
しおりを挟む「いらっしゃいませ。あら、ルトナーク家の坊ちゃんではありませんか。本日はどのようなご用件で?」
一目見ただけでオレがルトナーク家の者だってわかるのがすごいと思う。オレの代わりにカイルが、さっきオレが言ったことを店員……というかマダム? に伝えてくれた。
「白、黒、グレーの子ども服でございますね。少々お待ちください」
マダムはそう言って奥へと引っ込んだ。そして、数分もしないうちに戻ってきた。手には様々な服があり、子ども服を持って来てくれたのだとわかった。
「坊ちゃんの要望に応えられるかわかりませんが……」
と、眉を下げて子ども服を見せてくれた。せっかくなのでシンプルな服を探す。白いけれどフリルたっぷりなシャツは除外、黒いけれど金色の刺繍で目立つのも除外。そして最終的に、白のシンプルなシャツと黒の半ズボンにたどり着いた。靴下はグレー。うーん、求めていたモノトーン!
「あの、そんなにシンプルなもので良いのですか?」
「はい、もちろん! 試着してみたいのですが、いいですか?」
「それはもちろんでございます。お手伝いいたしますか?」
「いえ、ひとりで着られるので!」
お手伝いは断って、試着室に案内してもらう。試着室に入り、シンプルな服に着替えると、なんだか心が落ち着く気がした。ああ、やっぱりモノトーンの服を着ていると落ち着く。
日本にいた頃もこんな感じで過ごしてたもんなぁ。学ランだったし、馴染み深い色なんだよ、白、黒、グレーって。
着替え終わって試着室から出ると、カイルが気付いてオレに視線を向け、それから目を大きく見開いた。
「本当におひとりで大丈夫だったのですね」
「そんなに意外?」
「ええ、まぁ」
貴族の坊ちゃんって自分で着替えることないのかな? と考えつつ、「どーよ?」と聞いてみる。カイルはオレのことをじっと見て、それから感心したように言葉を紡いだ。
「とてもお似合いです。正直、驚きました」
「ふふん、そうだろうそうだろう。服が華美でも、オレの顔が華美になるわけじゃないから、こういうのが一番なんだよ」
カイルの言葉に腰に両手を当ててうなずく。得意げになっていると、マダムからも「とてもよく似合ってらっしゃいますよ」と微笑ましそうに言われて、なんだか急に恥ずかしくなり試着室の扉を閉めようとすると、カイルが「着て帰ります。いくらですか?」とマダムに聞いているではないか!
「え? か、カイル? 今日は見るだけでも……」
求めていた服があるとわかっただけでも収穫だ。オレがそう言うと、カイルはこっちを見て緩やかに首を振った。
「いえ、そんなに似合っているのですから、着て帰って旦那さまたちにお見せしましょう」
ぐっと拳を握って力説された! ま、地味な顔に地味な服。これが一番目立たなくてよさそうだけど。そういえば、ユーインさんがお金を渡していたのは、こうなることを予想していたのだろうか。だとしたらすごいな。
「お買い上げでよろしいですか?」
「はい」
「ありがとうございます。少々お待ちください」
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