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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

買い物 ――1

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 鏡で見たオレの……『エリス』の顔はやっぱり『地味』の一言に尽きる。オレの最終目標は辺境地でのスローライフ。そこを変えずにシェリルをなんとか救う手段を考えないといけないから、やっぱり目立つのはイヤだな。影で良いんだよ、オレは。

「エリスさまのお顔が地味、ですか?」

 怪訝そうに眉間に皺を刻むカイルに、なんでそんな顔をするのだろうと首を傾げつつも「そうだよ」と言葉を紡ぐ。

「ユーインさんやキャサリンさん、シェリル、ヒューとカイル。オレの周りにはこんなに顔の整った人たちがいるんだぜ? その仲なら、オレが一番地味だろ?」
「顔が整った……?」

 さすさすと自分の頬を触るカイルは、オレの言葉を意外そうに聞いていた。もしや自分が美少年だという自覚がなかったのだろうか。じぃっとオレを見つめるカイルに、眉を下げる。イケメンっていうか美少年に見つめられても嬉しくない。シェリル以外の美少女になら見つめられてみたいものだ。

「……エリスさまのお顔も整っていると思います」
「あはは、気を遣わなくていいって。それで? この辺に服屋ってあるの?」
「ありますが、やはり屋敷に戻られてから作られたほうが……」
「見るだけ見るだけ! な? だめ?」

 がしっとカイルの手を掴んでお願いすると、カイルは「う~ん」と唸り、そのあとすぐに困ったように眉を下げて微笑んだ。

「一店だけでしたら」
「やった! ありがとう!」

 きっと、オレの体力を心配してくれているんだろうぁと思う。自分でも体力のなさになげきたくなるくらいだからな!

 そんなことを考えつつ、待機していた馬車に乗り込む。カイルが御者に行き先を告げると、馬車は動き出した。屋敷の中しか見ていないから、街がどんな風なのかワクワクしてきた。

 教会から出てしばらくすると、いろんな建物が見えてきた。じっとその光景を眺めていると、カイルが「楽しいですか?」と尋(たず)ねてきた。

「楽しいよ。屋敷の中しか見てないし」
「エリスさまには新鮮に見えるのですね」

 どこか納得したように呟くカイル。確かに新鮮だ。海外に旅行に来た気分になってしまうから? だって建造物が日本とはまるで違う。でも、ここに暮らすんだよな、と考えるとなんだか切ない。死んだときの記憶もないから、いきなり『エリス』になったと言われても、理解が追い付かないんだよなぁ。

 せめて『エリス』の記憶があれば、ああ生まれ変わったんだって思えたのかもしれないけれど。

 でも、『エリス』本人の言葉や女神の言葉を思い出せば、生まれ変わりではないような気がして、それもそれで複雑な気持ちになる。

「あ、そろそろつきますよ」
「どれが服屋?」
「あの赤い屋根のところです」

 馬車はその赤い屋根のところで動きを止め、さっきのようにカイルが先に出てオレに手を差し伸べた。その手を取り、馬車を降りる。

「ここが、服屋……!」

 求めている服がありますように……! と祈りながら入店した。
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