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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

女神の祝福 ――1

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「なんでもないよ」
「そう、ですか?」

 なおも心配そうな表情を浮かべていたが、オレが「行こう?」と足を進めると諦めたのかついてきた。

「あの、女神の祝福ってどうすればいいですか?」
「女神像の前に跪き、祈りを捧げることで女神の祝福を授かります」

 祈りの言葉はあるんだろうか、と悩んでいると、すぐに女神像の前についた。祈りを捧げると祝福を受けられるって、なんだか不思議な仕組みだなぁと思いつつ、女神像の前に跪き両手を組んで祈りを捧げる。

 祈りを捧げる、というよりは挨拶をしたような感じだけど。すると、身体がなにかに覆われているような感覚があって驚いた。

『――目を開けて、異界より来た者よ』

 女性の凛とした声が聞こえて、目を開ける。目の前に絶世の美女がいて大きく目を見開いた。艶やかな長い髪には天使の輪、豊満なバストはたゆんと揺れて目のやり場に困る。思わず凝視してしまいそうになり、視線を逸らす。

『あら、照れちゃった? かーわいい!』
「あ、あの、誰ですか……?」
『わたしはこの世界の女神。……そうね、あなたの知っている世界に合わせて、ヴィーナスとでも名乗ろうかしら』

 ぎょっとしてしまったオレは悪くない、と思う。ヴィーナスと名乗った女神は、オレに対して頭を下げた。なんで!? なんで女神に頭を下げられているんだ!? と内心焦っていると、その理由を教えてくれた。

『あなたは『エリス』であって、『エリス』ではないの。本当の『エリス』の魂は鏡に捕らわれてしまい、空になった身体に『咲耶さくや』の魂を入れてしまった。本当にごめんなさい。まさか、まだ幼いあの子がそんなことをするなんて思わなかったの』

 女神の話を聞いて、あの姿見に映った青年――『エリス』のことを思い出した。でも、あの年齢だと『幼い』わけではないと思うのだけど、神と人間の違いでもあるのだろうか?

「えっと……?」
『まさか自分で毒を用意するなんて……。その前日に魂の返還の儀を行っていたみたいでね……。どうやら『エリス』は何度もこの世界をループしていたみたいで、どうにかして自分の姉――シェリルを救う手段を探していたみたいなの。そして、あなたの魂にそれを託した。本当にごめんなさい、こんなことになるとは思わなくて』

 ちょっと待って、『エリス』が毒を用意した? 七歳の子がどうやって? 混乱したオレに、女神はそっと手を伸ばしてオレの額にちゅっと口付けた。

『わたしにできることはこれだけなの。どうか、この世界で――……』

 なに? なにを言っているんだ? 遠のく意識の中、オレは目を閉じた。

 ――あ、もしかしてさっきのキスが祝福なのか。急に意識が浮上して、納得した。どうやら無事に終わったみたいだ。体感十分やそこらって感じだったけど、『エリス』がどうしてもシェリルを救いたかったという強い気持ちを持っていたことがわかった。
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