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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

エリスの護衛 ――4

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「ええと、なんで志願したのか、聞いてもいい?」

 自ら志願したと聞いて、興味が湧いた。だって五歳の頃に一回会ったきりなんだろう? シェリルは会っていたのかもしれないけれど、そうなれば彼女の護衛に志願するのでは?

「はい、もちろんです。私とエリスさまが初めてお会いしたのは、エリスさまとシェリルさまが五歳の頃でした。初対面で私に臆することなく接してくださったことを、今でも覚えております。そして、それがとても嬉しく、エリスさまの護衛になろうと決心したのです」

 ――うん? 臆することなく接したからという理由で? 護衛になることを決心した? 残念ながらその記憶はない。困惑しているのがわかったのか、カイルは目を伏せて両手を組んだ。

「その、当時の私は怖い顔をしていたみたいで、子どもに怯えられていたのです」

 怯えられるほどの表情ってどんな感じなのだろうか。

「へー……、子ども好きなの?」
「好き、というか興味はありました。幼い身体で一生懸命に遊んで、その場で眠ってしまうのを見て、私にはそのような記憶ないな、と」

 優等生は昔から優等生だったってこと? っていうか、もしかしてあまり遊んだ記憶もないのでは? 十二歳で? そんなのちょっと、いやかなり……。オレはうーんと首を捻る。もしかして、ユーインさんはこの子の肩の荷を下ろそうとしていた?

「じゃあさ、今度一緒に遊ぼうよ。あと、オレその頃の記憶ないんだ、ごめんね」
「はい、存じております。……あの、遊ぶとは……?」
「遊んだ記憶がないなら、これから作っていけばいいかなぁと。相手がオレじゃダメなら、他に友人を作ればいいし」
「いえ、エリスさまの護衛として、お傍を離れるつもりはありません」

 真面目だなぁ! と感心していると、即答してしまったのが恥ずかしかったのか、照れたように笑った。……今日最初に会ったときのあのすべてを見透かすような視線はなんだったのか。

 オレは「そ、そう」としか言えずに、頬をカリカリと人差し指で引っ掻いた。

「えーっと、息抜きも必要だしさ。たまにはあそぼ? な?」
「エリスさまと、ですか?」
「そ。よかったら、だけどさ」

 カイルはじっとオレを見てから嬉しそうに微笑んだ。その表情がものすごく眩しい。イケメン効果すげぇ……。やっぱりそのうち視力が下がりそうだなと肩をすくめた。

「あ、そろそろつきますよ」
「結構近いんだな」
「馬車ですから」

 ……そりゃそうか。馬車が止まって、カイルが扉を開けて先に降り、オレへと手を差し伸べる。その手を取って馬車から降りると、目の前には大きな教会が。立派だなぁと感心しつつ、教会を見上げているとカイルが「行きましょう」と歩き出す。

 教会の入り口まで行くと、神父服を着た人が立っていて、オレらに気付くとうやうやしく頭を下げた。

「お待ちしておりました、エリスさま」

 そう言って顔を上げると、教会の扉を開けて中に入れてくれた。

 教会の中は青を基調にしていて、なんだか空気が澄んでいるきがした。そういえば、日本でも神社やお寺に行ったときにこんな風に感じたな、と懐かしくなって思わずぎゅっと胸元の服を掴む。それに気付いたのか、カイルが心配そうに「エリスさま?」と声を掛けてきた。
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