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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

エリスの護衛 ――3

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 沙織サオリを庇って命を落としたであろうオレが言っても説得力がないけれど、オレよりも自分の命を優先して欲しいと思うのはダメだろうか。その言葉にふたりは黙ってしまったが、すぐにぎゅっと後ろからユーインさんに抱きしめられた。

「どうだい、カイル! うちの子はとても優しいだろう!」

 あ、親バカですねこの人。きっと、後ろでにこにこと笑っているだろう。そんなユーインさんに、カイルはどう反応するのかなって思ったら、彼もにこにこと笑っていた。

「はい、とてもお優しいですね。そんな方にお仕えできることを、誇りに思います」

 なんという優等生な発言……! 呆気に取られていると、今度は手のひらに唇を落した。イケメン眩しい。オレの視力が下がったらこの人たちのせいだ……と思考を明後日の方向に飛ばす。

 カイルは満足したのか立ち上がって、ユーインさんを見上げた。彼は抱きしめていた腕を離すと、ゆっくりとオレの背中を押した。そして、カイルは手を取ったままだったから、「こちらへ」とエスコートしようとする。ちょっと待て、オレ、男なんだけど?

「じゃあ、行っておいで。カイル、これお金ね。足りなかったら請求書をもらってきなさい」
「かしこまりました」

 うやうやしく頭を下げてお金を受け取るカイル。女神の祝福を受けるために出掛けるだけだよな? と彼らの顔を交互に見る。ふたりとも笑っていて、カイルが動き出すと手を引かれているからオレの足も動き出す。戸惑ってユーインさんを見ると、彼はただ笑顔で手を振っていた。

 玄関に向かい、用意されていた馬車に乗り込む。馬車に乗るときまでエスコートしてくれた。この人モテそう。

「では、教会に向かいましょうか」
「あ、うん……」

 そう言って御者に声を掛けて、馬車が動き出す。ここからどのくらい時間が掛かるんだろう? 流れる景色を眺めながらぼんやりと考えていると、カイルが言葉を紡いだ。

「改めましてご挨拶させていただきます。カイル・A・エアハートと申します。エリスさまのお目覚めを、ずっと待っておりました」

 さっき聞いた自己紹介をもう一度してきたカイルに顔を向ける。ずっと待っていた? と小首を傾げるオレに、カイルはさらに言葉を続けた。

「三年前、お倒れになってからずっと、私はエリスさまをお守りできるように鍛錬を積んできました」
「そんなに前から、オレの護衛になることが決まっていたの?」
「いいえ、私が志願したのです」

 ――え?
 ビックリして目をまたたかせる。オレの護衛を志願した?
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