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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

エリスの護衛 ――2

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 そして――夕飯のすぐあとに眠ってしまったからか、結構早めに起きられたんじゃないかと思う。誰かが来る前に着替えてしまえ! と思って気付いた。昨日、パジャマに着替える前に寝落ちしている! やっぱり体力作りは必要だな。ヒューの息子は天才らしいから、オレに合った方法を教えてくれるかもしれない。

 オレが知っている体力作りは、ご飯食べて筋トレして有酸素運動してって感じだから。徒歩通学だったから、自然と体力はついていたし。

 クローゼットに向かい、できるだけシンプルそうな服を選んで着替える。昨日、ユーインさんに言えば良かった! 服を買い替えたいって! カラフル過ぎてこのクローゼットの服は、地味な顔立ちの『エリス』には似合わねぇよ……! と思わず遠い目をしてしまう。

 昨日と同じようにできるだけ地味な服を選んで着替える。……このフリルたっぷりなのも似合わない気がするから、シンプルな服が欲しい。

 着替え終わるのと同時に、扉がノックされた。

「どうぞー」

 入ってくるようにうながすと、扉が開く。ユーインさんと、ひとりの少年が立っていた。もしかして、この子がヒューの息子なんだろうか。

 少年はオレの姿を見ると、数回目をまたたかせる。それからふわりと花が綻ぶように微笑んだ。ヒューも美形だったけど、この子も将来イケメンになることが約束されているくらいの美少年だ。

 透き通るようにキラキラと輝く銀髪に、優しく細められている紫水晶のような瞳。背はオレよりも高い……というか、『エリス』の身体が七歳の頃から成長していないから、ぐんと高く見えるのかも?

「おはようございます。ユーインさん、と……」
「おはよう、エリス」
「おはようございます、エリスさま。そしてご無沙汰しておりました。カイルでございます」
「おはよう、カイル」

 年齢はオレのほうが下だけど、たぶんこれで合っているんだよな? カイルと名乗った少年は、オレに近付くとひざまづいた。びっくりして後ろに下がろうとしたら、いつの間にか背後に移動していたユーインさんに両肩を掴まれて下がれなかったどころか、身動きを封じられた。

「このカイル・A・エアハート、誠心誠意エリスさまに仕えることを誓います」

 これなんの儀式!? オレがパニックになっているのを気付いているのかいないのか、カイルはオレの手を取ってうやうやしく手の甲に唇を落した。映画で見たことあるやつー! って違う! どうすればいいのかわからなくて、ただじぃっとカイルを見てしまった。

 一体いつまでオレの手の甲に唇をつけている気だ。視線が交わった。上目遣いでこっちを見るな、顔が眩しい! ただ少し、その視線が怖いんだが! こっちの内面を見透かすような視線は心臓に悪い!

「――よ、よろしく……?」

 とりあえずそれだけ言うと、カイルはようやくオレの手の甲から唇を離して嬉しそうに笑った。さっきの視線はなんだったんだろう。

「早速今日からエリスの護衛として働いてもらうことになった。エリスのことを頼むよ、カイル」
「もちろんでございます。我が命に代えても、エリスさまをお守りいたします」
「いや、自分の命を守ってくれ……」
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