最終目標はのんびり暮らすことです。

海里

文字の大きさ
上 下
18 / 184
1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

エリスの護衛 ――2

しおりを挟む

 そして――夕飯のすぐあとに眠ってしまったからか、結構早めに起きられたんじゃないかと思う。誰かが来る前に着替えてしまえ! と思って気付いた。昨日、パジャマに着替える前に寝落ちしている! やっぱり体力作りは必要だな。ヒューの息子は天才らしいから、オレに合った方法を教えてくれるかもしれない。

 オレが知っている体力作りは、ご飯食べて筋トレして有酸素運動してって感じだから。徒歩通学だったから、自然と体力はついていたし。

 クローゼットに向かい、できるだけシンプルそうな服を選んで着替える。昨日、ユーインさんに言えば良かった! 服を買い替えたいって! カラフル過ぎてこのクローゼットの服は、地味な顔立ちの『エリス』には似合わねぇよ……! と思わず遠い目をしてしまう。

 昨日と同じようにできるだけ地味な服を選んで着替える。……このフリルたっぷりなのも似合わない気がするから、シンプルな服が欲しい。

 着替え終わるのと同時に、扉がノックされた。

「どうぞー」

 入ってくるようにうながすと、扉が開く。ユーインさんと、ひとりの少年が立っていた。もしかして、この子がヒューの息子なんだろうか。

 少年はオレの姿を見ると、数回目をまたたかせる。それからふわりと花が綻ぶように微笑んだ。ヒューも美形だったけど、この子も将来イケメンになることが約束されているくらいの美少年だ。

 透き通るようにキラキラと輝く銀髪に、優しく細められている紫水晶のような瞳。背はオレよりも高い……というか、『エリス』の身体が七歳の頃から成長していないから、ぐんと高く見えるのかも?

「おはようございます。ユーインさん、と……」
「おはよう、エリス」
「おはようございます、エリスさま。そしてご無沙汰しておりました。カイルでございます」
「おはよう、カイル」

 年齢はオレのほうが下だけど、たぶんこれで合っているんだよな? カイルと名乗った少年は、オレに近付くとひざまづいた。びっくりして後ろに下がろうとしたら、いつの間にか背後に移動していたユーインさんに両肩を掴まれて下がれなかったどころか、身動きを封じられた。

「このカイル・A・エアハート、誠心誠意エリスさまに仕えることを誓います」

 これなんの儀式!? オレがパニックになっているのを気付いているのかいないのか、カイルはオレの手を取ってうやうやしく手の甲に唇を落した。映画で見たことあるやつー! って違う! どうすればいいのかわからなくて、ただじぃっとカイルを見てしまった。

 一体いつまでオレの手の甲に唇をつけている気だ。視線が交わった。上目遣いでこっちを見るな、顔が眩しい! ただ少し、その視線が怖いんだが! こっちの内面を見透かすような視線は心臓に悪い!

「――よ、よろしく……?」

 とりあえずそれだけ言うと、カイルはようやくオレの手の甲から唇を離して嬉しそうに笑った。さっきの視線はなんだったんだろう。

「早速今日からエリスの護衛として働いてもらうことになった。エリスのことを頼むよ、カイル」
「もちろんでございます。我が命に代えても、エリスさまをお守りいたします」
「いや、自分の命を守ってくれ……」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

出戻り聖女はもう泣かない

たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。 男だけど元聖女。 一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。 「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」 出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。 ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。 表紙絵:CK2さま

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

前世である母国の召喚に巻き込まれた俺

るい
BL
 国の為に戦い、親友と言える者の前で死んだ前世の記憶があった俺は今世で今日も可愛い女の子を口説いていた。しかし何故か気が付けば、前世の母国にその女の子と召喚される。久しぶりの母国に驚くもどうやら俺はお呼びでない者のようで扱いに困った国の者は騎士の方へ面倒を投げた。俺は思った。そう、前世の職場に俺は舞い戻っている。

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

処理中です...