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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
転生!? ――16
しおりを挟むそれに、あの言い方だと、オレが彼の身体を乗っ取ったんじゃなくて、『エリス』がオレを呼んだってこと? ああもう、意味がわからない! こんな道の世界で、オレになにができるというのか! いや、まだ十歳だし、いろいろできるかもしれないけれど。
シェリルを救って欲しいってなんだろう……?
もしかして、どのルートでもシェリルは断罪されるってことか? しかし、救うにしてもどうやって救えばいいのかさっぱりわからない。
「マジか……」
困った。ものすごく困った。大体、なんであの『エリス』はここが乙女ゲームの中だと知っていたんだろう。
思考を停止して、のろのろとその部屋から出る。そこを執事服を着た人に保護されて、部屋に戻された。あの部屋の姿見を壊してしまったと伝えて、掃除をお願いすると「かしこまりました」と言ってくれた。
部屋につき、「ゆっくりお休みください」と深々頭を下げて出て行く彼に、お礼を伝えてからベッドに横になる。大の字になって天井を見上げ、はぁ、と小さく息を吐く。
「あの性格をオレがどうにかできるもんなのか……?」
シェリルがオレを嫌っているのは間違いないだろう。両親を取られるとでも思っているのだろうか。まともに話していないけれど。うーん、そもそも『救う』ってどういう意味の『救う』だ?
悪役令嬢になるのを? それとも命を? あー……全然わからない。目を閉じるとそのうち睡魔が襲ってきてそのまま眠ってしまった。
――次に目が覚めると夕方だった。屋敷を少し歩き回っただけなのに疲れたのか。体力ないなぁ、オレ。三年も寝たきりのようなもんだったから、仕方ないことなのかもしれないけどさ。
そういえば、寝たきりだったわりにはスムーズに身体が動かせるな。もしかして魔法の効果なんだろうか。グーパーと手を動かしてみる。変な感じは全然しない。関節もスムーズに動かせるし。すごいことだよな。
「エリスさま、お食事の準備が整いました」
扉をノックされて、ポーラの声が聞こえた。もうそんな時間なのか。オレは「今行く!」と返事をしてからベッドを降りた。
体力作りについてはユーインさんと話したほうがいいかな。あと、あの鏡のことをも聞いてみないと。
この身体でできることってなんだろう。シェリルがどうしてあんな態度を取るのかを調べて、あとは……いや、そこら辺は追々決めていこう。
なんでオレがシェリルを救えるのか『エリス』が考えたのかわからないけれど、家族に幸せになって欲しいと願う気持ちはとてもわかる。彼女が一体どんなことをするのかはわからないけれど、悪いことをする前に止めなきゃいけないよな。
そう考えれば、この世界でどうやって生きていくかの方針が決まったような気がする。ぐぅっと腹の虫が鳴いた。腹が減っては戦ができぬ、と呟いて扉まで歩き、ポーラと一緒に食堂まで向かった。
夕食もやはりスープ一杯が限界だったけど、美味しくいただけた。水を飲みながらシェリルの様子を窺う。躾けられているからか、優美な動きで食べている。キャサリンさんとユーインさんも。うーん、さすが貴族? そんなことを考えていると、視線に気付いたのかシェリルがキッときつい視線をオレに寄こした。
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