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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
転生!? ――13
しおりを挟む懺悔するような弱々しい声で俯いてくキャサリンさんに、ただ黙って彼女を見た。オレの手を包み込んでいる手が震えている。
「……大丈夫ですか?」
「……ごめんなさいね、本当に。でもね、七歳の誕生日に、エリスが毒で倒れたときには、シェリルはエリスに泣きついたのよ。本当は、あなたのことが大好きなの。それが素直に表に出せなくなっただけで……」
うーん、ちょっと想像できないや。シェリルが泣いた? オレを好き? そんな感じには見えなかった。見えないようにしているだけって言うのなら、なんのために? と首を捻る。
「シェリルはどうして、オレを嫌うようになったんでしょうか」
「わからないの。私たちにはべったりと甘えにくるのに、エリスが私たちに近付くと、『来ないで』って。……そして、目覚めたあなたは、記憶を失ってしまった」
心底悲しそうに眉を下げるキャサリンさんに、オレはなにも言えなくなった。あの子が悪役令嬢になるのには、なにか理由があるのかもしれない。オレ的には辺境地で過ごしたいから、このままストーリー通りになっても良いのだけど、この人たちが巻き添えを喰らうのはちょっとなぁ。
一体どういう理由で、あんな態度を取るようになったのだろう。うーん、少し調べてみたほうが良いのだろうか。
「……えーっと、その、オレが言うのもなんですけど、シェリルはあなたたちのことは好きなのでしょう? それなら、オレに対するシェリルの態度はそのままで良いです。ただ、ひとつお願いしたいことがありまして――……」
「お願いしたいこと?」
オレはこくりとうなずいて、それからにっこりと微笑みかけた。
「女神の祝福を受けさせてください。早急に」
「あなたはまだ目覚めたばかりなのよ? そんなに急がなくても……」
「急ぎたいんです。オレに宿る力がなんなのか、知りないので」
キャサリンさんは少しだけ考えるように目を伏せて、それからすぐに目を開けてじっとオレを見た。女神の祝福を受ければ、どんな力がオレに宿っているのかわかるはず。これからのことを考えれば、すぐに調べてもらって、力の使い方を教わって未来に備えたい。
「――わかりました。手配をするので、明日教会に向かいましょう」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げると、キャサリンさんは手を離す。代わりにぎゅっとオレを抱きしめた。その身体が震えているのを見て、オレはぽんぽんと彼女の背を叩いた。慰めるような行動に、彼女は少しだけ泣いたみたいだった。
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