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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

転生!? ――11

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 数回深呼吸を繰り返して、ベッドから降りた。気持ちを落ち着かせようと、軽く身体を動かそう。体育のときにやっていた柔軟体操をして、ぐるりと部屋の中を眺める。

 姿見があることに気付いて、近付いていく。鏡を覗き込んでみると、やっぱり見慣れない顔がそこにあって、違和感がすごい。

 そっと鏡に触れると、ひんやりとした感触に眉を下げる顔が視界に入って、やっぱりこれがオレの身体なのか……と納得するしかなかった。

 でも、オレは日本人だった。十七歳の高校生で、両親と沙織サオリという家族がいたという記憶しかない。……どういうことだ?

「――もしも、もしも、オレがエリスの身体を乗っ取っていたら……?」

 いつか、この世界から消えるのかもしれない。そうなれば、『エリス』が目覚めたと嬉しそうにしていたユーインさんやキャサリンさんたちはどうなるのだろうか。

 きっとすごく悲しむだろう。そのくらい、『エリス』は愛されていたと感じている。

 ……生まれ変わったのか、憑依なのか、教えてくれる人は誰もいない。

 ダメだ、考えれば考えるほど暗くなっていく。パシンと両手で頬を叩き、暗い考えを打ち消すように頭を横に振る。考えても仕方ないことは考えない!

 それにしても、この世界が乙女ゲームの世界だとしたら、シェリルは悪役令嬢になってしまうのだろうか。確かに性格はきつそうだけど、なんだか話しているとちょっと違和感があるんだよなぁ。

 本音を話せていないような……そんな違和感が。この違和感が正しいかどうかは、今後よくシェリルを観察して判断しよう。あんまりにも言動が過ぎる場合は、いさめたほうが良いのだろうか。

 そんなことを姿見の前で真剣に考えていると、扉をノックする音が聞こえた。

「どうぞ!」

 思っていた以上に大きな声が出た。扉が開いて、ちょっとびっくりした顔をしたキャサリンさんが入ってきて、そっと扉を閉めた。その動きを見ると、あまりにも優雅で、ああ、この人育ちが良いんだなぁと思った。

「ごめんなさいね。どうしても、エリスと話したくて」

 キャサリンさんは眉を下げて微笑む。優しくて悲しい顔だ。少しだけ胸が痛むのは、エリスの心なんだろうか。彼女はオレのところまでくると、オレと視線を合わせるようにしゃがみ込んでオレの頬に手を伸ばす。

 その手が震えているのを見て、頬に触れようとする彼女の手を避けなかった。

 どこかホッとしたように表情を緩ませる彼女の手は冷たくて、緊張しているのがわかった。

「……昔の話をしましょうか。あなたとシェリルが生まれてからの話を」
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