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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

転生!? ――9

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「すみません、お待たせしました」

 扉まで歩いて少しだけ扉を開けて顔を出し、ユーインさんを探す。彼はすぐにオレに気付いてくれて、近付いてきた。

「本当に自分で着替えられたんだね」
「え? ええ、まぁ」

 感心したように言われて首を傾げる。この世界の十歳はひとりで着替えられない、なんてことはないよな? ああいや、違う。貴族だからか。貴族って使用人に着替えを任せているイメージあるもんな。

「それじゃあ、行こうか」
「はい」

 ユーインさんが手を差し伸べてきた。オレ、男なんだけど……? でも、十歳(身体は七歳)ってことを考えれば普通、なのかな。この人たちにしたら、三年ぶりに目覚めた息子だもんな。

 ちょっと躊躇ためらったけど、ユーインさんの手を取る。彼はわかりやすくぱぁっと明るい表情を浮かべて、食堂まで手を繋いで歩いた。イケメンの笑顔は太陽のように眩しい。

 ただ、少しだけユーインさんの手が冷たく、緊張しているのかなって思った。子ども体温のオレの熱で、ちょっとずつ温かくなっている気はするけれど。

 食堂に入ると、すでにキャサリンさんとシェリルが座っていた。オレらも椅子に座ると、朝食が出てくる。朝から豪勢だな。

 全員そろって食前の祈り? をしてスプーンを手に取る。こっそり「いただきます」と呟いた。

 三年ぶりの食事と思うと、まずは胃を驚かせないようにしないといけないよな。きっとこの家の料理人もそう思ったのか、ユーインさんたちに指示されたのかはわからないけれど、食べやすそうなスープが目の前に置かれている。中に入っているのは卵とにんじん、玉ねぎみたいだ。

 スプーンを手に取ってスープを口に運ぶ。にんじんも玉ねぎもトロトロなくらい柔らかくて、食べやすい。

「味はどうだい?」
「おいしいです」

 塩コショウのシンプルな味付けだけど、今のオレにはちょうどよいと思う。ずっと食事を摂っていなかったからか、すぐにお腹いっぱいになってしまった。申し訳ないけれど、このスープ一杯で限界だ。

「お腹いっぱいになった?」

 オレの様子に気付いたのか、ユーインさんがたずねてきた。こくりとうなずくと「そうか」と微笑む。

「まぁ、こんなに残すなんて!」
「シェリル、喋るなら飲み込んでからにしなさい」

 シェリルが子どもらしい(?)文句を言うと、キャサリンさんがシェリルの口元をナプキンでぬぐう。

「ごちそうさま。えっと、このあとってどうすればいいですか?」

 とりあえずシェリルの文句にはなにも言わずに、ユーインさんに聞いてみると、彼は「ゆっくり休んでいて」と眉を下げて笑った。そんなことを言われても、どうすれば……?

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