上 下
8 / 184
1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?

転生!? ――8

しおりを挟む

◆◆◆

 次に目が覚めたとき、頭の中がすっきりとしていた。あー、よく寝た!

 ベッドから抜け出して、窓へと足を運ぶ。カーテンを開けてみると、光が眩しくて思わず目元を細めた。目が慣れて改めて外の景色を眺めると、色とりどりの花々が見えた。

 花瓶の花ってあそこから摘んでいるのかな? それにしてもいい天気だ。雲ひとつない、晴天。

 とりあえず、状況を整理しよう。

 あの暴走車から沙織サオリを引き離そうとして、たぶん命を落とした。で、目覚めたら見慣れない部屋にいて、『エリス』と呼ばれた。

 さらに、『シェリル』という双子の姉もいるという。

 やっぱり乙女ゲームの世界ってことになるんだろうか。うーん。

 そこら辺はまだわからないな。よく似た世界ってことかもしれないし、今は知らないことを知っていくほうが先だな。

 いろいろ考えていると、扉をノックする音が聞こえた。誰だろう、ポーラかな?

「どうぞー」

 扉の前まで移動してそう声を掛けると、扉が開いた。部屋の中に入ってきたのはユーインさんだった。昨日の今日でちょっと気まずい。たぶん、彼もそうなのだろう。

 ……それにしても、本当に美形だな、この人。金髪少女はこの人とキャサリンさんの良いところをすべて引き継いだような容姿をしているのに、あの性格はないわー……。なんて、そんなに話してないけどさ。

「……エリス?」
「ああ、すみません。ちょっと考え事を。おはようございます、ユーインさん」
「ああ、おはよう、エリス。具合はどうだい?」
「元気です。お腹空きました」
「はは、なら朝食を摂ろうか。ポーラに身支度を頼もう」
「自分でできますので、呼ばないでください」

 慌ててユーインさんを止めた。ポーラに着替えさせてもらうなんて絶対イヤだ。身体は七歳だけど、オレには前世……たぶん、前世だよな? その記憶がある。

 まさか、オレがこの子の身体に憑依しているってわけじゃないよな?

「自分で? ああ、女性に裸を見せるのがはずかしくなかったのかな?」
「……まぁ、そうですね」
「なら、今度エリスの護衛兼付き人を見つけてこよう。そうだな、ヒューの息子はどうだ? 年齢もエリスより二歳年上で近いしね」

 あのヒューって人、妻子持ちだったのか! 若そうに見えたんだけどなぁ。

「はは、考えてみます……」

 ここが沙織の言っていたゲームの世界なら、オレがなにもしなければこの家は破滅の道を辿るのか……? 一家離散って言っていたよな、確か。

 シェリルって、一体どんなことを主人公にするんだろう。

 一家離散すると、オレは辺境地で暮らすわけか。……むしろ今、辺境の地で暮らしたい。のんびりと。

「えーっと、着替えるので部屋の外に出てくれませんか?」
「手伝わなくても平気?」
「はい」

 きっぱりと断言すると、ユーインさんはちょっと寂しそうに眉を下げたあとに、部屋から出て行ってくれた。

 クローゼットに向かって服を取り出そうとして気付く。……オレの好みの服がないことに!

 なんだこのカラフルな服は。オレはどっちかというとモノトーンのシンプルな服が好きなんだ。顔が地味系だからカラフルな服でも与えたんだろうか。そんなことを邪推しつつ、一番地味なパステルカラーの服を掴んで着替えた。

 服が欲しいって言ったら、買ってくれるかな……?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

名前のない脇役で異世界召喚~頼む、脇役の僕を巻き込まないでくれ~

沖田さくら
BL
仕事帰り、ラノベでよく見る異世界召喚に遭遇。 巻き込まれない様、召喚される予定?らしき青年とそんな青年の救出を試みる高校生を傍観していた八乙女昌斗だが。 予想だにしない事態が起きてしまう 巻き込まれ召喚に巻き込まれ、ラノベでも登場しないポジションで異世界転移。 ”召喚された美青年リーマン”  ”人助けをしようとして召喚に巻き込まれた高校生”  じゃあ、何もせず巻き込まれた僕は”なに”? 名前のない脇役にも居場所はあるのか。 捻くれ主人公が異世界転移をきっかけに様々な”経験”と”感情”を知っていく物語。 「頼むから脇役の僕を巻き込まないでくれ!」 ーーーーーー・ーーーーーー 小説家になろう!でも更新中! 早めにお話を読みたい方は、是非其方に見に来て下さい!

異世界に召喚され生活してるのだが、仕事のたびに元カレと会うのツラい

だいず
BL
平凡な生活を送っていた主人公、宇久田冬晴は、ある日異世界に召喚される。「転移者」となった冬晴の仕事は、魔女の予言を授かることだった。慣れない生活に戸惑う冬晴だったが、そんな冬晴を支える人物が現れる。グレンノルト・シルヴェスター、国の騎士団で団長を務める彼は、何も知らない冬晴に、世界のこと、国のこと、様々なことを教えてくれた。そんなグレンノルトに冬晴は次第に惹かれていき___ 1度は愛し合った2人が過去のしがらみを断ち切り、再び結ばれるまでの話。 ※設定上2人が仲良くなるまで時間がかかります…でもちゃんとハッピーエンドです!

逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

左側
BL
陽の光を浴びて桃色に輝く柔らかな髪。鮮やかな青色の瞳で、ちょっと童顔。 それが僕。 この世界が乙女ゲームやBLゲームだったら、きっと主人公だよね。 だけど、ここは……ざまぁ系のノベルゲーム世界。それも、逆ざまぁ。 僕は断罪される側だ。 まるで物語の主人公のように振る舞って、王子を始めとした大勢の男性をたぶらかして好き放題した挙句に、最後は大逆転される……いわゆる、逆ざまぁをされる側。 途中の役割や展開は違っても、最終的に僕が立つサイドはいつも同じ。 神様、どうやったら、僕は平穏に過ごせますか?   ※  ※  ※  ※  ※  ※ ちょっと不憫系の主人公が、抵抗したり挫けたりを繰り返しながら、いつかは平穏に暮らせることを目指す物語です。 男性妊娠の描写があります。 誤字脱字等があればお知らせください。 必要なタグがあれば付け足して行きます。 総文字数が多くなったので短編→長編に変更しました。

クズ王子、弟にざまあされる

相沢京
BL
「貴様を追放するっ!」 弟である第三王子の祝いの会でそう叫んだのは第一王子でクズ王子と言われているダグラスだった。 「え、誰を・・?」 「決まっておろう。カイン、貴様だっ!」 断罪から始まった事件が、この後、思いもよらない陰謀へと発展していく。 ***************************** BL要素が少なめですが、楽しんで頂ければ嬉しいです。 誤字脱字の報告、ありがとうございます。 短編のつもりですが、今後もしかしたら長編となるかもしれません。

異世界に来たけど、自分はモブらしいので帰りたいです。

蒼猫
BL
聖女召喚に巻き込まれた就活中の27歳、桜樹 海。 見知らぬ土地に飛ばされて困惑しているうちに、聖女としてもてはやされる女子高生にはストーカー扱いをされ、聖女を召喚した王様と魔道士には邪魔者扱いをされる。元いた世界でもモブだったけど、異世界に来てもモブなら俺の存在意義は?と悩むも……。 暗雲に覆われた城下町を復興支援しながら、騎士団長と愛を育む!? 山あり?谷あり?な異世界転移物語、ここにて開幕! 18禁要素がある話は※で表します。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

スキルも魔力もないけど異世界転移しました

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!! 入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。 死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。 そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。 「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」 「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」 チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。 「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。 6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。

婚約者の恋

うりぼう
BL
親が決めた婚約者に突然婚約を破棄したいと言われた。 そんな時、俺は「前世」の記憶を取り戻した! 婚約破棄? どうぞどうぞ それよりも魔法と剣の世界を楽しみたい! ……のになんで王子はしつこく追いかけてくるんですかね? そんな主人公のお話。 ※異世界転生 ※エセファンタジー ※なんちゃって王室 ※なんちゃって魔法 ※婚約破棄 ※婚約解消を解消 ※みんなちょろい ※普通に日本食出てきます ※とんでも展開 ※細かいツッコミはなしでお願いします ※勇者の料理番とほんの少しだけリンクしてます

処理中です...