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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
転生!? ――2
しおりを挟む「あとは悪役令嬢の弟で、誰にも関心を持たないエリスさん! 双子の姉が悪役令嬢でね、物語の最後で姉であるシェリルちゃんが断罪されるんだけれど、それに巻き込まれて一家離散しちゃうの。エリスさんは辺境地でひっそり暮らすの。主人公はそれを追いかけて結婚するんだよ!」
主人公、たくましいな!? それになんかいろいろ情報量がおかしくないか、苦労してそうな人だな、エリス。でも、誰にも関心を持たない人がなんで攻略キャラなんだろうか。
「それはまた、すごい設定だな……?」
「シェリルちゃんが断罪されるのが毎回胸に来るんだよねぇ」
胸元にそっと手を置いて切なそうに呟く沙織に、一体どんな内容なのか気になってしまう。
「シェリルってどんな子なんだ?」
「シェリルちゃんはね、アレン王子の婚約者なの」
「ん? アレンって攻略キャラの?」
「そうだよ。だからね、アレン王子ルートだと主人公のことをいじめちゃうの。学園の卒業パーティーで断罪されて、闇の力が暴走しちゃってね……」
沙織がしゅんと肩を落としながら乙女ゲームの内容を語る。闇の力ってなんだ、と聞いてもよい雰囲気ではない。沙織の気を逸らそうと、「他にも攻略キャラっているのか?」と話題を振ると、彼女はぱっと顔を上げて何度もうなずいた。
「うん! 最後の隠しキャラはね、全員を攻略しないと出てこないの!」
隠しキャラだからだろうな、それは。でも、三人を攻略しないと出てこないキャラって、いろんな秘密知ってそう。ちなみに沙織はパッケージ画像で赤茶の髪、藍色の瞳の青年がカーティス、栗皮色、明るい茶色の瞳の青年がエリスだと教えてくれた。そして、金髪のくるくるとした髪で青い瞳の少女がこのエリスの双子の姉、シェリルだと言っていた。……なぁ、この双子本当に血が繋がっている……? と思わず凝視してしまうくらいに似てなかった。沙織に聞いたら本当に血の繋がった双子らしい。二卵性双生児にしても似てなさ過ぎて驚いた。
「ちなみにその隠しキャラもパッケージにいるのか?」
「うーんとね、表にはいないけれど、裏にいるよ」
沙織がスマートフォンを操作している。たぶん、その画像を探しているのだろう。でも、オレがその画像を見ることはなかった。
「沙織!」
ぐっと彼女を突き飛ばす。こっちに向かって来る暴走車から少しでも引き離したくて。ブレーキをかける音なんて聞こえない。沙織が「お兄ちゃん!」と叫ぶ声が聞こえた。カン、と彼女のスマートフォンが乾いた音を立てて道路に落ちるのと同時に、とてつもない衝撃がオレを襲って――……痛みを感じることもなく、その命を終えたのだろう。
どうか、彼女が幸せに暮らせますように――意識がなくなるその瞬間まで、それだけを祈った。
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