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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
転生!? ――1
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キーンコーンカーンコーン、と何度も聞いた学校のチャイムの音。下校時間を知らせる音に、時計を確認するように顔を上げる。今日はノークラブデーだから、さっさと帰って読み途中の漫画を読もう。
鞄を手に取って校門に向かう。校門の前には、ひとつ下の妹がオレのことを待っていたようで、ぱぁっと明るい表情を浮かべて大きく手を振った。そんなに勢いよくぶんぶんと振らなくても……なんて考えたけれど、その様子が愛らしく見えて思わず口元に弧を描く。
「咲耶お兄ちゃん!」
思春期だというのに、兄であるオレに懐く可愛い妹、沙織。小さい頃に親が再婚して出来た妹だ。オレが五歳、沙織が四歳からの付き合いだから、妹として可愛がっている。
沙織に合わせてままごとやら折り紙やら刺繍やら料理やら一緒にしていたら、いつの間にか家事が上達していた。沙織はわからないことがあるとオレに聞いてくるから、教えられるようにってがんばっていた結果だ。
「聞いて、お兄ちゃん! 今日ね、やっとあの人を攻略できそうなの!」
「お、マジで? がんばったな」
「うん!」
沙織は乙女ゲームをプレイするのが趣味で、今も一所懸命に攻略している。ただ、沙織の楽しみ方は主人公=自分ではなく、主人公としてキャラが立っているゲームのほうが好みらしく、『少女漫画を読んでいるみたいで楽しいの!』と目をキラキラと輝かせていた。
校門前で話しているのもなんだから、歩きながら沙織の話をする。
「ちなみに沙織はどのキャラがお気に入りなんだ?」
「ええ? えっとねー、どのキャラもすごく魅力的だからなぁ」
オレの質問に沙織は目を丸くして、それから悩むように顎に人差し指を添えて上を向く。
「じゃあ、どんなキャラがいるんだ?」
「攻略キャラのこと?」
こくりとうなずくと、沙織は両手を合わせてくるりと身体を反転させてこっちを見た。
「んっとね、まずは王子さま! いっつもニコニコしているんだけど、ちょっと腹黒いところもあるの。ただね、主人公にはすごく優しいの! 初めて自分を『王子』として見なかった子だから! たぶん、このアレン王子がメインヒーローなんだと思う。パッケージの絵も大きかったし」
一度足を止めて、スマートフォンを取り出してパッケージ画像を見せてくれた。そして、「この人がアレン王子だよ」と赤髪、緑の目の青年を指した。確かに他のキャラに比べて大きく見える。
「あとはね、主人公の通っている学園で主席のサボリ魔、クールなところが格好いいカーティスくん! 結構世話好きでね、主人公が道に迷ってるとさりげなく助けてくれるの。あ、そうそう、アレン王子のお友達だよ!」
へー、クールで世話好き? それはまた、モテそうな。……いや、乙女ゲームだからそりゃそうか?
鞄を手に取って校門に向かう。校門の前には、ひとつ下の妹がオレのことを待っていたようで、ぱぁっと明るい表情を浮かべて大きく手を振った。そんなに勢いよくぶんぶんと振らなくても……なんて考えたけれど、その様子が愛らしく見えて思わず口元に弧を描く。
「咲耶お兄ちゃん!」
思春期だというのに、兄であるオレに懐く可愛い妹、沙織。小さい頃に親が再婚して出来た妹だ。オレが五歳、沙織が四歳からの付き合いだから、妹として可愛がっている。
沙織に合わせてままごとやら折り紙やら刺繍やら料理やら一緒にしていたら、いつの間にか家事が上達していた。沙織はわからないことがあるとオレに聞いてくるから、教えられるようにってがんばっていた結果だ。
「聞いて、お兄ちゃん! 今日ね、やっとあの人を攻略できそうなの!」
「お、マジで? がんばったな」
「うん!」
沙織は乙女ゲームをプレイするのが趣味で、今も一所懸命に攻略している。ただ、沙織の楽しみ方は主人公=自分ではなく、主人公としてキャラが立っているゲームのほうが好みらしく、『少女漫画を読んでいるみたいで楽しいの!』と目をキラキラと輝かせていた。
校門前で話しているのもなんだから、歩きながら沙織の話をする。
「ちなみに沙織はどのキャラがお気に入りなんだ?」
「ええ? えっとねー、どのキャラもすごく魅力的だからなぁ」
オレの質問に沙織は目を丸くして、それから悩むように顎に人差し指を添えて上を向く。
「じゃあ、どんなキャラがいるんだ?」
「攻略キャラのこと?」
こくりとうなずくと、沙織は両手を合わせてくるりと身体を反転させてこっちを見た。
「んっとね、まずは王子さま! いっつもニコニコしているんだけど、ちょっと腹黒いところもあるの。ただね、主人公にはすごく優しいの! 初めて自分を『王子』として見なかった子だから! たぶん、このアレン王子がメインヒーローなんだと思う。パッケージの絵も大きかったし」
一度足を止めて、スマートフォンを取り出してパッケージ画像を見せてくれた。そして、「この人がアレン王子だよ」と赤髪、緑の目の青年を指した。確かに他のキャラに比べて大きく見える。
「あとはね、主人公の通っている学園で主席のサボリ魔、クールなところが格好いいカーティスくん! 結構世話好きでね、主人公が道に迷ってるとさりげなく助けてくれるの。あ、そうそう、アレン王子のお友達だよ!」
へー、クールで世話好き? それはまた、モテそうな。……いや、乙女ゲームだからそりゃそうか?
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