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11話

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 生徒会のメンバーがステージ上へ集まるのと同時に、放送委員会の会長と副会長がマイクを持ってやって来た。

「はいはーい、ここからは先程も登場しました、放送委員会のディック・ダモリアと!」
「ニック・マシューズが進行役を交代します!」

 生徒会メンバーの紹介が終わった後、すぐに登場した放送委員会の委員長であるディック先輩(三年生)と、ニック先輩(二年生)が楽しそうに進行役を交代した。
 ディック先輩は栗色の長髪で、天然パーマなのかくりくりとした髪をひとつに結んでいる。青色の目を爛々と輝かせながら辺りを見渡す。
 ニック先輩は赤毛の短髪で、ダークブルーの瞳だ。肌も白い。……ディック先輩が褐色だからそう思うのかな? ふたりは顔を見合わせてこくりとうなずきあった。

「二、三年生は毎年恒例! 一年にとってははじめての『生徒会メンバーを探せ! 目指せかくれんぼチャンピオン!』の説明をしまーす!」

 ……なにその名称! ぎょっとしてリアム先輩たちに視線を向けると、先輩たちはさっと俺から視線を逸らした。ユーゴは名称を聞いて肩を震わせて笑っている。……ただのかくれんぼで良いじゃん!

「生徒会メンバーにはこれより、一階から三階の空いている教室に隠れてもらいます! 十分後、俺とニック以外は生徒会メンバーを探してもらいます! 生徒会メンバーを探すついでに、一階から三階の教室の場所を覚えること!」
「制限時間は、おれの『スタート』の合図から三十分! 今年一回目と言うこともあり、賞品はないけど楽しんでね!」
「そして、これが一番大事! このかくれんぼ、隠れるほうも探すほうも魔法の使用を一切禁じます!」

 ……探すついでに教室を覚えるって、出来るんだろうか。って言うかなんで四階はダメなんだろう。サロンがあるから?

「魔法を使ったらペナルティとして、一ヶ月全部のところのトイレ掃除が待っています! ペナルティは先生たちが決めました! なんで毎年トイレ掃除なんでしょうか! 手抜きを感じつつ、時間が惜しいので生徒会メンバーはかくれてくださーい!」

 ……ノリが良いな、この人たち……。と思いながら、俺らは急いでステージを降りて体育館から校舎へと向かう。十分以内にどこに隠れろって言うんだか……。
 校舎内に入り、「それぞればらけて隠れること!」と言うリアム先輩に、全員で「了解!」と言葉を返して俺らはバラバラに走り出す。
 って言ってもさ、……これ、一年の俺らが不利じゃないか? なぜか俺の隣を走っているユーゴに視線を向けると、ユーゴは「どうした?」と息も切らさず聞いて来た。

「バラけたほうが良いよな!?」
「いや、折角だし、一緒に隠れようぜ」

 なにがどう折角なのか説明を求めたいけれど……。俺が困惑していると、ユーゴは「こっちこっち」と俺を誘導した。……なんなんだ、一体。……相手は公爵家の人間だしなぁ。……いや、学園内にいる間はそういうのヤダって感じだったけど。
 でもまぁ、校舎で迷子になるよりは良いかと考えて、ユーゴの後をついて行った。

 隠れた場所は三階の理科室。……って言っても、隠れられそうなところないけどなぁ。

『あーあーあー、生徒会メンバーの皆さん、隠れましたか? 隠れましたね? 十分経過したので始めますよ~! それでは全学年、検討を祈る! スタート!』

 いつの間にか十分経っていたらしい。理科室に隠れる場所なんてあるか? と思ったらユーゴに手首を掴まれて理科室の廊下側の壁へと近付いた。

「確か、ここだったかな?」

 ユーゴが壁を触っていくと、カチッと何かを押したような音が聞こえた。
 ぽっかりと穴が空いている。ちょうどふたりくらいは入れる狭さの穴。か、隠し扉? ……どうなってんだ、この学園の構造。

「え、何ここ……」
「かくれんぼにはぴったりだろ?」

 ユーゴが笑顔を浮かべて、その中へと入っていく。……理科室にこんな仕掛けがあったとは思わなかった。俺とユーゴがその中に入ると、勝手に扉が閉まる。狭いから身体をくっつけないといけなくて、……これが漫画だったら結構な萌えシチュエーションなんだけどなぁと妄想で現実逃避。
 狭い場所でイチャイチャするのって萌えだよな! ……トイレ掃除もさ、漫画ではトイレでヤってる場面もあったから、ペナルティのトイレ掃除ってヤってる場面に出会いそうだよな。……流石にそう言う場面に出くわすのは気まずくなりそうなので、それだけは遠慮願いたい。
 俺はただ、イチャイチャしているカップルを見て萌えたいんだ!
 ……しかし、暗くてユーゴの顔が見えない。彼の胸に自分の頬がくっついているけど、暑苦しくないだろうか。
 バタバタと足音が聞こえてきた。三階まで探しに来ているようだ。

「いたか?」
「いない!」
「オリエンテーションじゃなければ、デート権もらえるのになぁ」
「あ~、ルイとデートしてみたかった……!」
「……後二回のかくれんぼに期待だな」

 生徒たちの声も聞こえる。流石ルイ先輩、人気者だ。誰かが扉を開く音が聞こえた。理科室に入って来たみたい。ドキドキと鼓動が早鐘を打つ。

「生徒会のメンバーさん、いませんか~?」

 …………声を掛けられた。かくれんぼの最中に声を掛ける人がいるとは……。

「んー、いないのかなぁ」
「……いや、声を掛けられて『はいはいここですー!』なんていうわけないだろ……」

 呆れたような声に思わず同意のうなずきを返してしまう。どうやら理科室には数人生徒が入ってきているみたいだ。
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