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10話

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「――と、そろそろ時間か。体育館に向かおう」

 リアム先輩の言葉に、俺らは椅子から立ち上がって体育館へ向かった。体育館には既に生徒や先生たちが集まっていた。……こんなに生徒がいたのか。生徒会メンバーが次々とステージに上っていく。俺とユーゴもステージへ。
 リアム先輩はマイクを取り出して、一度目を閉じてからすぅっと息を吸って声を発した。

「お待たせいたしました、これより新入生歓迎オリエンテーションを開始します。――その前に、今期の生徒会メンバーを紹介します。まずは私。三年生、生徒会長、リアム・マクブライド。どうぞよろしくお願いします。そして副生徒会長の――」

 マイクをルイ先輩に渡す。ルイ先輩はにこっと微笑んでからマイクに向けて声を発する。

「副生徒会長、ルイ・ウィンゲート。二年生。学園内で何かあったら気軽に声を掛けてください。次は会計長!」

 さっとチェスター先輩にマイクを渡すルイ先輩。チェスター先輩は周りを見渡してから自己紹介を始める。

「会計長、三年のチェスター・ウォーレンだ。予算などの掛け合いを楽しみにしている。次は書記長」

 ……楽しみにしていて良いんですか、それ。
 チェスター先輩はジャック先輩にマイクを手渡す。ジャック先輩はがしっとエイヴェリー先輩と肩を組んだ。……カップル? カップルなのか!?

「三年、書記長のジャック・デイヴィーズ。どうぞよろしく! そんで、同じく書記の……」

 ジャック先輩がエイヴェリー先輩へとマイクを向ける。

「二年のエイヴェリー・ファウルズ! 書くのは得意だから、色々書いちゃうよ~! そして、期待の新人たち! 最初は誰もが知っている公爵家からが良いかな?」

 ジャック先輩からユーゴへとマイクが渡った。ユーゴはちょっと複雑そうにエイヴェリー先輩を見て、生徒たちに向けて声を発する。

「一年。副会長のユーゴ・ルグランだ。ルグラン公爵家の次男と言うことで、知っている人たちも居るだろうけど、ここではただの学友として接して欲しい。公爵家と言うことで、三年間生徒会に所属するのは決定事項なので、まぁ、よろしく。最後はお前だ」

 ……何で俺がトリなんだ! 気持ちを落ち着かせるために深呼吸を数回繰り返してから俺は生徒たちを見渡す。……本当、結構な人数が居るんだな。

「生徒会庶務長、一年のアーサー・デュボアです。よ、よろしくお願いします!」

 ばっと頭を下げる。
 全員の自己紹介が終わると、パチパチと生徒たちが拍手を送る。自己紹介が終わり、俺は急いでリアム先輩にマイクを戻す。

「――それでは、各委員会の紹介から始めます」

 リアム先輩を残して、俺らはステージから降りて、ルイ先輩に「こっちで待機ね」と言われたので、クラスの人たちが居るところではなく、先生たちと同じ場所に待機することになった。
 放送委員会から紹介が始まった。多分、次の進行に関係している。……そして、風紀委員会や図書委員会、様々な委員会の紹介を、俺らは黙って聞いていた。
 委員会の紹介が終わったら、次は部活の紹介だ。サッカーやテニス、バスケ……色んな運動部。茶道部や書道部など、日本の文化の部活もあった。そして――お待ちかねの魔道具部がステージに上がった。

「ま、魔道具部の部長の三年……ダドリー・アンダーウッドと申します……。え、と……ま、魔道具では、魔力を持たない人でも使える魔法道具を作る……研究を、しています。え、ええと、例えば、こんなものを!」

 そう言って取り出したのは……水晶? かな。ダドリー先輩は水晶をどう操作したのかわからないけれど、体育館が一気に暗くなる。え、こんな段取りあった!? とちょっとパニックになってしまった。
 俺を落ち着かせるように、誰かがぎゅっと手を握って来た。じんわりと温かい手の温度を感じて、俺はちょっと落ち着いた。

「え、ええと、これを、こうして……? えっと、あ、こうです!」

 ステージ上でダドリー先輩がちょっと焦っているような声を上げていたけど、すぐに明るい声を出す。すると、ほわほわと何か、白い光が水晶から出てきたようだ。暗い空間に儚い白い光。……まるで雪のようだ。光だから、触れても消えない……と言うか触れるって表現もなんか違うような……まぁ、良いか。

「こ、こんな風な道具を作っています……! ええと、ぶ、部員数がギリギリなので、し、新入生の入部を、お待ちしております……!」

 暗闇が一気に明るくなって眩しい。そして、ようやく視界が眩しさに慣れた頃、俺の手を握った相手がユーゴだったと言うことに気付いた。

「……落ち着いたか?」
「う、あ、うん……」

 変な声を上げてしまった。そんな俺らを、ルイ先輩が「ん?」と言う表情を浮かべて、俺とユーゴが手を繋いでいることに気付いて、にんまりと笑った。……激しく誤解されているような気がする!

「一気に真っ暗になって驚いちゃった?」
「そ、そうですね! でも白い光、綺麗でしたね!」

 ばっとユーゴの手から逃れて、ルイ先輩に向かってそう言うと、ルイ先輩はにこにこ笑いながら「魔道具部って面白いよねー」と明るく言っていた。部屋に戻ったら誤解を解こう……!

「次は合唱部だね。部活紹介はこれで終わり。合唱部の歌は一聴の価値があるよー」

 そう言うルイ先輩。
 合唱部の歌声は、ルイ先輩の言う通りだった。……なんて綺麗な歌声。ピアノも指揮者も生徒だ。……思わず聴き惚れてしまうような、歌声。曲が終わり、指揮者がこちらを向いて合唱部の紹介をし、頭を下げたのと同時に、生徒たちも先生たちも惜しみない拍手を送った。

「かくれんぼ以外のプログラム終了。さ、ステージ行くよ!」

 そう言ってルイ先輩が歩き出した。俺らはルイ先輩について歩き、ステージへ。かくれんぼが始まるのか……!
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