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4章 禍を転じて福と為す
禍を転じて福と為す 10-1
しおりを挟む「おはようございます、流羽さん」
「……おはよう……って言うには、陽が高そうだけど……」
「まぁまぁ。たまにはゆっくりも良いものでしょう?」
陸矢のベッドの中で目が覚めた俺は、隣で愛しそうな瞳を向けていた陸矢と視線が合った。一体何時になったのだろうと辺りを見渡し、十一時近いことに気付くと、がばっと起き上がろうとした……が、躰が言うことを聞かなかった。……力が入らないのだ。
「流羽さん、今日は無理しないほうが良いですよ……。六時間くらい、ぶっ通して愛し合っていたから……」
「六時間!? そんなにヤってったっけ!?」
こくり、とうなずく陸矢を見て、マジか、と呟いた。そりゃ躰が言うことを聞かないはずだ。空が明るくなっていくのを見たような気はしたけれど……。
「すみません、久しぶりの流羽さんの躰を堪能していたら、抱き潰していました……」
「あ、いや、それは良いんだけど……」
止めなかったのは俺だし。……それに、気持ち良かったし……。っていうか俺、最後のほう記憶にないんだけど、変なことを言っていないよな……? とちょっと不安になった。
「流羽さんって、前後不覚になったら、ふわふわしているんですね」
「俺、なんか言ってた!?」
「気持ち良い、好き、幸せ、を繰り返していましたよ。可愛かったです」
にこにこと笑う陸矢を見て、俺は両手で顔を隠した。快楽に溺れたことはなかったのに……いや、そもそも前後不覚になるくらいヤったのは陸矢とくらいだからか!?
「嬉しかったです。オレ、流羽さんに好かれているんだなぁって感じて」
「……好きだけど、ちょっと……待って……」
気持ちがもう少し落ち着くまで待ってほしかった。でも、陸矢は待つ時間をくれなかった。顔を隠している俺の手を掴んで、引き離すと手にちゅうっと吸い付いてきたのだ。
「り、くや?」
「もっとたくさん、オレに甘えてくださいね。オレのほうが年下ですけど、流羽さんに甘えて欲しいです」
「……ええと、もう充分すぎるくらい甘えてると思うんだけど……?」
「まだまだ。もっとですよ」
「えっと、じゃあ……キスして……?」
「それはオレもしたいので、甘えじゃないと思いますよ?」
ふふ、と笑いながら陸矢の顔が近付いて来る。唇が重なって、ちゅっとリップ音が響いた。
「キスだけで、そんなに蕩けた顔をしないでくださいよ。もっとしたくなるでしょう?」
俺の表情が蕩けていると言うけれど、陸矢の表情だって蕩けてる。俺のことを好きで仕方ないという顔を見て、胸が高鳴った。
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