【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

文字の大きさ
上 下
95 / 100
4章 禍を転じて福と為す

禍を転じて福と為す 8-1

しおりを挟む

 いろいろと話しながら食べて、ほろ酔いになったところで陸矢りくやが「そろそろ帰りましょうか」と言ったので、会計をして元同僚に「ごちそうさま」と言ってから帰路についた。

 ビールは二杯しか飲んでいないけれど、ふわふわとした気持ちになって心地良い。

 家について、ふたり揃って「ただいま」と言ってから中に入る。手洗いうがいを済ませてから、彼に「お茶飲む?」と聞いたが、「水のほうが……」と言ったので、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して扉を閉じ、食器棚からコップをふたつ取り出してトクトクと注いだ。

 コップを陸矢に渡すと、「ありがとうございます」と受け取り、水を一口飲む。

「お酒を飲んだあとの水って、なんだか無性に美味しい気がします」
「それは言えてる」

 俺も水を飲んでから同意のうなずきを返すと、陸矢はグッと一気に飲み干し、ちらりと時計を見た。

「もうだいぶ遅くなってしまいましたね」
「居酒屋で結構話したもんな」

 いろんな話をしたから、すっかりと遅い時間になってしまった。

 陸矢が「楽しかったですよ」と微笑むのを見て、じっと彼を見つめる。彼は首を傾げたが、「遅い時間ですから、もう寝ましょうか」と自室に行こうとするのを、くいっと袖を引っ張って引き止めた。

流羽るうさん?」

 引き止めたことに驚いたような声だった。俺は一度深呼吸をしてから、陸矢の目を真っ直ぐと見て、言葉を紡ぐ。

「――俺と、えっちなこと、しませんか?」

 陸矢の目が、大きく見開く。それから、心配そうに俺を見た。

「無理を、していませんか?」

 不安そうな表情を見て、心配されているんだなと感じた。

「陸矢となら、大丈夫」

 俺の答えに、陸矢は嬉しそうに目元を細めて、それから小さくうなずいた。

 それぞれシャワーを浴びて、全裸でベッドの上に座る。陸矢はそっと、俺の頬に手を伸ばして、撫でるように動かし顎を固定すると唇を重ねた。重ねた唇の隙間から、舌が口内へ入りいろんなところを舐められる。舌を絡めて溢れた唾液が口の端から流れていく。くらくらとするくらい、濃厚なキス。

「流羽さん……」

 薄く開いた瞳から、隠しきれない欲情を感じ取って、ぞくりとした。あいつらとは違う、感覚。陸矢が触れる場所が、甘く痺れるような……触れられたときの快感を思い出してもぞもぞと太ももを擦り合わせる。キスだけでも、反応を示しだした陰茎に気付いた陸矢が唇を離して俺の肩に額を押し付けるようにして、「よかった……」と呟いた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

王太子からは逃げられない!

krm
BL
僕、ユーリは王家直属の魔法顧問補佐。 日々真面目に職務を全うしていた……はずなのに、どうしてこうなった!? すべては、王太子アルフレード様から「絶対に逃げられない」せい。 過剰なほどの支配欲を向けてくるアルフレード様は、僕が少しでも距離を取ろうとすると完璧な策略で逃走経路を封じてしまうのだ。 そんなある日、僕の手に謎の刻印が浮かび上がり、アルフレード様と協力して研究することに――!? それを機にますます距離を詰めてくるアルフレード様と、なんだかんだで彼を拒み切れない僕……。 逃げられない運命の中で巻き起こる、天才王太子×ツンデレ魔法顧問補佐のファンタジーラブコメ!

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

視線の先

茉莉花 香乃
BL
放課後、僕はあいつに声をかけられた。 「セーラー服着た写真撮らせて?」 ……からかわれてるんだ…そう思ったけど…あいつは本気だった ハッピーエンド 他サイトにも公開しています

お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら

夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。 テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。 Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。 執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

有能社長秘書のマンションでテレワークすることになった平社員の俺

高菜あやめ
BL
【マイペース美形社長秘書×平凡新人営業マン】会社の方針で社員全員リモートワークを義務付けられたが、中途入社二年目の営業・野宮は困っていた。なぜならアパートのインターネットは遅すぎて仕事にならないから。なんとか出社を許可して欲しいと上司に直談判したら、社長の呼び出しをくらってしまい、なりゆきで社長秘書・入江のマンションに居候することに。少し冷たそうでマイペースな入江と、ちょっとビビりな野宮はうまく同居できるだろうか? のんびりほのぼのテレワークしてるリーマンのラブコメディです

幼馴染は僕を選ばない。

佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。 僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。 僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。 好きだった。 好きだった。 好きだった。 離れることで断ち切った縁。 気付いた時に断ち切られていた縁。 辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。

処理中です...