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4章 禍を転じて福と為す
禍を転じて福と為す 8-1
しおりを挟むいろいろと話しながら食べて、ほろ酔いになったところで陸矢が「そろそろ帰りましょうか」と言ったので、会計をして元同僚に「ごちそうさま」と言ってから帰路についた。
ビールは二杯しか飲んでいないけれど、ふわふわとした気持ちになって心地良い。
家について、ふたり揃って「ただいま」と言ってから中に入る。手洗いうがいを済ませてから、彼に「お茶飲む?」と聞いたが、「水のほうが……」と言ったので、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して扉を閉じ、食器棚からコップをふたつ取り出してトクトクと注いだ。
コップを陸矢に渡すと、「ありがとうございます」と受け取り、水を一口飲む。
「お酒を飲んだあとの水って、なんだか無性に美味しい気がします」
「それは言えてる」
俺も水を飲んでから同意のうなずきを返すと、陸矢はグッと一気に飲み干し、ちらりと時計を見た。
「もうだいぶ遅くなってしまいましたね」
「居酒屋で結構話したもんな」
いろんな話をしたから、すっかりと遅い時間になってしまった。
陸矢が「楽しかったですよ」と微笑むのを見て、じっと彼を見つめる。彼は首を傾げたが、「遅い時間ですから、もう寝ましょうか」と自室に行こうとするのを、くいっと袖を引っ張って引き止めた。
「流羽さん?」
引き止めたことに驚いたような声だった。俺は一度深呼吸をしてから、陸矢の目を真っ直ぐと見て、言葉を紡ぐ。
「――俺と、えっちなこと、しませんか?」
陸矢の目が、大きく見開く。それから、心配そうに俺を見た。
「無理を、していませんか?」
不安そうな表情を見て、心配されているんだなと感じた。
「陸矢となら、大丈夫」
俺の答えに、陸矢は嬉しそうに目元を細めて、それから小さくうなずいた。
それぞれシャワーを浴びて、全裸でベッドの上に座る。陸矢はそっと、俺の頬に手を伸ばして、撫でるように動かし顎を固定すると唇を重ねた。重ねた唇の隙間から、舌が口内へ入りいろんなところを舐められる。舌を絡めて溢れた唾液が口の端から流れていく。くらくらとするくらい、濃厚なキス。
「流羽さん……」
薄く開いた瞳から、隠しきれない欲情を感じ取って、ぞくりとした。あいつらとは違う、感覚。陸矢が触れる場所が、甘く痺れるような……触れられたときの快感を思い出してもぞもぞと太ももを擦り合わせる。キスだけでも、反応を示しだした陰茎に気付いた陸矢が唇を離して俺の肩に額を押し付けるようにして、「よかった……」と呟いた。
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