【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

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4章 禍を転じて福と為す

禍を転じて福と為す 5-2

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 いきなりまとまった金額を『奴らからの慰謝料です』とぽーんと渡されたときの衝撃を思い出して、小さく笑う。念書も渡されたし……陸矢が手を回してくれたおかげで、俺はあいつらに会わずに済んだ。そのことはとてもありがたく思っている。きっと俺は、これからも地元に帰ることないし、小・中学の同窓会に行くこともない。ちなみにその慰謝料は『微々たるものですが……』と苦々しく陸矢が言っていたが、俺よりも会社の女性に渡すべきものだと思う。男の俺でもかなりの恐怖を感じたんだ。

 男よりも力が負けてしまう女性なら、より怖かったに違いない。

「さて、今日はなにを作るかな……」

 思索にふけっていると、スマホのアラームが鳴った。こうしておけば、時間通りに進められる。気持ちを切り替えることがだいぶ容易になった気がした。

 スマホを手にして、アラームを止める。と、同時に、陸矢からメッセージが届いた。金曜日の夜だから、飲みにでも行くのだろうかと思って確認すると、『今日は外食しませんか?』というお誘いだった。

「外食?」

 思わず目を丸くする。ソファに座って、陸矢にメッセージを返し、何度かやり取りをした。

『でも、その前に、少し流羽さんの時間が欲しいんです』

 ――俺の時間が欲しいってどういうことなんだ? と首を傾げつつ、質問をするとすぐに返信が。

『髪伸びてきたので、切りたくて。流羽さんも一緒にどうかな? と思いまして』

 ……確かに、ここ数ヶ月で陸矢の髪は伸びた。切る暇がないほど、仕事が押したらしい。……たぶん、俺のせい。

 陸矢は絶対にそんなことは言わないだろうけれど……。弁護士や興信所に依頼していただろうから。

 俺は前髪をつまんで、ゆっくりと息を吐く。俺にとって、この前髪は目元を隠す『お守り』のようなものだった。――でも、もう、良いのかもしれない。

「……一緒に行く、と……」

 返信をすると、『迎えに行くので出掛ける用意をしていてくださいね』と返ってきた。

 ソファから立ち上がって、自室に行き、服を着替えていろいろと外出の準備を始め、三十分もしないうちに陸矢が帰って来て、陸矢も簡単に着替えてからすぐに一緒に外に出た。

「こっちに来て驚いたことが、いくつかあるんだよ」
「へえ、なんですか?」
「……いろんな店が夜遅くまで営業していること」
「競争率高いでしょうからねぇ……」

 そんな会話をしながら、陸矢の案内で美容室に。前に言っていたところかな?

「こんばんは、よろしくお願いします」
「あらぁ、いらっしゃい、陸矢ちゃん。その子が例の?」

 ――出迎えたのは、とても綺麗な……男性? だった。
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