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4章 禍を転じて福と為す
禍を転じて福と為す 2-2
しおりを挟む「流羽さん、人の目なんて、そんなに気にしなくても良いんですよ」
陸矢の言葉に目を瞬かせる。どういうつもりで言っているのだろうか。俺が黙ったままでいると、ふっと表情を和らげて、「ごちそうさまでした」と手を合わせた。いつの間に食べ終えたんだ。いや、いつもより、俺が遅いだけか……?
「今度、美容院行きましょうよ。オレ、流羽さんの目、好きですよ」
「あ、ありがとう……?」
疑問系になりつつも、なんとか口を動かせた。目を隠すために伸ばしていた前髪。それを切ったら、どうなるのだろう? あまり長すぎるのもアレなので、適当な長さに自分で切っていたから、かなりガタガタだと思う。
「でも、オレが『いい』って言うまでは、ひとりでの外出を控えてもらうことになります」
「それっていつまでになるんだ?」
「まだわかりません。オレが一緒なら、外出も大丈夫です」
「……陸矢と一緒なら?」
「はい。オレ、護身術を習っていましたから」
にこにこと笑う陸矢に、目を見開いた。ちなみに俺は護身術を習ったことがない。正確に言えば高校生の頃、そういう授業がちょっとはあったかな? と言うくらい、護身術に関しては知らないのだ。
「……それは、強そうだな」
「そこそこってところですけどね。……あ、今日は早めに出ないといけないので、そろそろ行きますね」
「……陸矢は、大丈夫なのか?」
「もちろん、きちんと対策していますから」
きっぱりと言い切って、重ねた皿をシンクに置いてくれた。それから出掛ける準備を始めるのを見て、俺は残りの朝食を食べた。食べ終えてからすぐに食器を下げ、食器を洗っているとピンポーンとインターホンが鳴った。
「あ、もう来たみたいですね」
「え?」
いつの間にか用意を終えた陸矢が、きっちりとしたスーツを着ていることに気付いた。彼が着るのはいつも割とラフな格好だったので、スーツ姿を見るのは新鮮だ。
「それじゃあ流羽さん、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
パタパタと足音を響かせて、陸矢が玄関に向かう。玄関まで見送りに行くと、玄関の扉が開いて、昨日の運転手が顔を見せた。俺に気付くと会釈をしてくれたので、俺も慌てて会釈を返した。
「それじゃあ、今日は休んでいてくださいね」
「あ、うん……ありがとう」
気遣ってくれて、と心の中でつぶやく。陸矢の背中をぱたんと扉が閉まるまで見つめていた。
「……休んで、とは言われたけど……」
くるりと躰を反転させて、小さく息を吐く。
「……やっぱり、動いていたほうが、気が楽なんだよなぁ……」
よし、今日も家を綺麗にしよう。そうすることで、昨日のことを考えないようにしよう。そう決めて、俺はまず、食器を片付けようとキッチンに戻った。
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