【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

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4章 禍を転じて福と為す

禍を転じて福と為す 1-1

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 何分くらいシャワーを浴びていたのだろうか。なんとか落ち着きを取り戻して、深呼吸を繰り返した。

 それからシャワーを止めて、脱衣所へ。用意されたバスタオルで髪と躰の水滴を拭き、洋服に着替えた。

 髪を乾かして、リビングまで向かう。陸矢りくやが俺に気付くと、ぱっと顔を上げてこちらを見た。

 カタン、とビデオカメラをテーブルに置いて、こっちへおいで、とばかりに手招かれ、彼に近付く。ぽんぽん、とソファに座るようにうながされて、ソファに座り「シャワー、ありがとう」と言いながら座り、改めて彼を見ると、殴られたところが変色している。

「陸矢、病院行こう? 痛いだろ……?」
「……その前に、流羽るうさん。助けるのが遅れてすみません」

 しゅんと項垂れる陸矢に驚いて、慌てて明るい声を出す。

「大丈夫だって! 助けに来てくれて、ありがとう!」

 陸矢が痛々しそうに表情を歪め、そっと俺の手を取り「……流羽さんも一緒に行きましょう」と言われた。

「いや、俺はいいよ。大丈夫だから……」
「いいえ、痛むでしょう?」

 陸矢は視線を俺の手首に向けた。同じように視線を向けると、山村やまむらに掴まれたところにくっきりと彼の手の痕が残っていた。痛いと思っていたが、こんなにくっきり残るくらいの力で掴まれていたのか……と眉間に皺を刻む。

「ね、行きましょう」

 ……心配そうに眉を下げる陸矢に、小さくうなずいた。

 ……そういえば、俺の荷物……あいつらのところに置いたままだった。スマホも財布も……あいつらの場所だ。でも、取りに行くことはしたくない。

「あ、でも俺、今……財布ないや……」
「そこは大丈夫です。病院に行けば、戻ってきていると思うので」
「え?」

 陸矢の言葉に首を傾げたが、陸矢は「さ、行きましょうか」と立ち上がり、俺も立ち上がらせると病院へと向かい、診察を受けた。そして、陸矢の言った通り、俺の荷物はなぜか病院に預けられていて、返ってきた。

「……どうなってんの……?」
「車の運転手、いたでしょう? 彼にちょっとお願いしたんですよ」
「え! でも、相手は五人もいたんだぞ? ひとりで大丈夫だったのか?」
「大丈夫だから流羽さんの荷物が返ってきたんですよ」

 ……そう言われると、そうなのだけど……。一応中身を確認してみると、なにも失われていなかった。財布の中身をそのままだったし、スマホになにか細工されているような感じはしない。

 ほっと安堵の息を吐き、陸矢に再び「ありがとう」と伝えると、ふるふると首を横に振られた。

「手当ても終わりましたし、帰りましょうか」
「……ああ、帰ろう」

 それぞれ手当てをしてもらい、陸矢の家に帰った。そして、その日はそれぞれの部屋で休んだ。
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