【本編完結】一夜限りの相手に気に入られています!?

海里

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3章 偶然の再会

偶然の再会 23-2

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「――なんだぁ?」
「なんか頼んでたか?」
「いやぁ……? とりあえず、見てくるよ」

 チャイムが鳴ったことで、同級生たちの動きが止まった。チャイムは鳴りやまない。連打しているようだ。彼らは顔を見合わせ、それから、そのうちのひとりが玄関に向かう。そして、なにかぼそぼそと話している声が聞こえ――……

流羽るうさんはどこだ!?」

 ――陸矢の、声が聞こえた。

 どうしてここがわかったんだ? 驚いていると、もうワントーン低くした声でもう一度、俺のことを聞いた。

 そして、乱暴に、部屋の扉が開けられた。陸矢は同級生の手首を握りしめ、俺の姿を――……全裸で、今にもバイブをれられる直前の姿を見て目を瞠り、それから俺と視線が合った、と思う。陸矢の声を聞いて、姿を見て、ポロリと涙が零れた。

 それを見た陸矢がうつむき、自身の額に手を当てて「はぁ……」とため息を吐く。

 そのため息を聞いて、びくりと肩が揺れる。そして、陸矢が髪を掻き上げると、手首を掴んでいた相手を――バイブを手にしているヤツに向けて突き飛ばした!

 いきなりのことに驚いたのか避けられなかったふたりは、「ぐふっ!」と沈む。――今、なにが起きたんだ? と思わずふたりを見ると、他の奴らが立ち上がり、やれやれとばかりに肩をすくめる。

「おいおい、あんた何者だよ?」
「流羽さんと深い関係の者ですが?」

 その言葉にばっと彼に顔を向ける。陸矢は「もう大丈夫ですよ」と言うように微笑み、俺はぽかんと口を開けた。

 辺りを見渡した陸矢は、なにかに気付いて不快そうに表情を歪めた。

「ビデオ……? やること最低ですね」

 ……AVを撮る、という目的だったろうからな……。でも、俺にそれを確認する余裕はなかった。陸矢は同級生たちの罵声を無視し、真っ直ぐに俺のところに来てくれた。全裸でいる俺に、自身の上着を脱ぎ、そっとかけてくれる。

「帰りましょう、流羽さん」
「り……」

 彼の名を呼ぼうとして、唇を噛み締める。こいつらに、陸矢の名前を聞かせるのもイヤだった。

 陸矢は俺の気持ちを汲んでくれたのか、小さくうなずいてくれた。

「おい、待てよ! こいつは俺らの……!」
「……『俺らの』? 違うでしょう。この人は、あんたらみたいなクズとは違う」

 ――陸矢のこんなに怒りに満ちた声を、初めて聞いた。視線で人が殺せるのなら、きっと殺しているであろう鋭いまなざしを山村に向けている。山村は「ひっ」と短い悲鳴を上げた。

 それから、陸矢はその鋭いまなざしのまま、にこりと微笑みを浮かべる。あまりにちぐはぐな表情を見て、彼が本気で怒っていること感じた。その対象は俺ではなく、山村たちのようだけど……こんなに怒ってくれるのか、と目頭が熱くなった。
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