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3章 偶然の再会
偶然の再会 22-1
しおりを挟む山村から時間指定のメールが届いた。その時間帯に合わせるために、早めにスーパーに向かい食材を買い込んで、陸矢が食べるであろう夕食を作った。今日はカレーだ。こういうときに便利なメニューだと思う。数日同じメニューになる可能性もあるけど、カレーってうまいよな。
こういうのはパッケージに記載されている通りに作るのが一番だ。アレンジは慣れてから。……とはいえ、こういうので作るの久しぶりかもしれない。なんせ、レトルトが豊富だからな。
……さて、予約炊飯もしたし、カレーのおともにらっきょうと福神漬けも用意した。個人的な好みだが、らっきょうはピリ辛のもの、福神漬けは赤色ではなく茶色のものが好きだ。今度、陸矢に好みを聞いておこう。
出掛ける準備をして、さっそく待ち合わせの場所に向かう。
待ち合わせの場所は、この前陸矢と一緒に行ったカフェだった。
少し早めに出たので、待ち合わせの時間にはかなり余裕があった。
先に入っておくか、とカフェに入ると、「いらっしゃいませ!」という元気のよい声が店内に響く。
「あの、待ち合わせをしているのですが、その人が来るまで待っていて良いですか?」
「はい、もちろんです。こちらの席にどうぞ」
にこにこと可愛らしく笑う店員に案内されたのは、外の様子を窺える窓の近くだった。
「……ホットココアをお願いします」
「かしこまりました」
案内された場所に座って、この前見たドリンクメニューを思い出しながらメニューを伝えると、店員はこくりとうなずいた。
さほど待たずにホットココアが運ばれて、「ありがとう」と受け取り、ホットココアをのんだ。温かいココアに、緊張が解れる。ココアをちびちび飲みながら窓の外を眺める。
カフェの近くにきた山村が、軽く手を振った。俺も手を振り返し、彼がこっちに来るのを待つ。
「悪い、待たせたか?」
「いや……」
緩やかに首を左右に振ると、「そっか」とちょっと安堵したように息を吐き、椅子に座った。それから「アイスコーヒーを」と近付いてきた店員に伝えた。
アイスコーヒーが届き、ストローを咥えて飲む姿を見た。
「……あのさ、山村の言った仕事ってなに?」
俺が問いかけると、山村はピクリと眉を動かした。
「ん~、ここで話すのもなんだし……、移動しようぜ」
「移動って、どこに?」
「まぁまぁ、すぐにわかるから!」
山村はアイスコーヒーを一気に飲む。その勢いにつられるように、俺もぬるくなったココアを一気に飲んだ。
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